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Quantum.Tech APAC 2023レポート

シンガポールが構築を進める「量子エコシステム」──APAC注目スタートアップと日本の“チャンス”

後編

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 APAC(アジア太平洋)エリア初、そしてエリア最大級の会議として4月4日・5日にシンガポールにて開催された「Quantum.Tech APAC 」。APACエリアを中心に欧米の先進企業までが集まる本カンファレンスに、国内外の産官学のパートナーと共に量子技術による社会変革を推進するQuantum Transformation(QX)プロジェクトをリードしてきた私が、日本から唯一登壇しました。量子業界の概観や世界の投資動向等を紹介した前編に続き、後編ではシンガポールにおける量子分野の概観とAPAC量子スタートアップの発表内容をご紹介します。

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シンガポールにおける量子分野の概観

 開催国シンガポールを代表して基調講演をしたのは、シンガポールの産官学を巻き込んだQEP(Quantum Engineering Programme)のDirectorを務めるAlexander Ling氏。QEPは、2018年に開始された産業界の課題に焦点を当てた量子技術の社会実装と、量子エコシステムを育成するためのイニシアティブをサポートする団体です。シンガポール国立研究財団とシンガポール科学技術研究庁の支援を受け、シンガポール国立大学が主催、国内の様々な研究機関が参画しています。

Quantum Engineering Programme Director Alexander Ling氏
Quantum Engineering Programme Director Alexander Ling氏

 Ling氏は講演の冒頭、シンガポールにおける量子エコシステムの全体像を示しました。

 シンガポールにおける量子の歴史は約20年で、日本をはじめとする量子先進国と比べて、決して長くはありません。シンガポールでは、2002年に政府が量子情報の国家プロジェクトに予算を投じたところから、研究開発がスタートしました。シンガポールには量子技術に取り組む理論系グループが26、実験系グループが29あり、それらのグループから出版された論文は2400本以上あります。特筆すべきは、2018年には量子技術の産業活用や量子エコシステムの形成を目的としたQEPが設立され、既に8つの量子スタートアップが立ち上がっていることです。

 私が認識している限り、日本の量子スタートアップの数も恐らく同数程度です。前編で取り上げたDavid氏のプレゼンによれば、シンガポールにおけるこれまでの量子への投資額は日本の9分の1程度でしかありません。ここから、シンガポールでは基礎研究だけではなく、より早期から産業活用、エコシステム形成への取り組みに資源を集中投下していることが推察されます。

 なお、8つのスタートアップのうち、6つはCQTのウェブサイトに記載されています。量子暗号技術を扱うS-FifteenSpeQtral、量子ソフトウェアを扱うAngelQEntropica LabsHorizon Quantum Computing、量子センサーを扱うAtomionicsです。この中の多くは今回のカンファレンスでも登壇しています。

 次にLing氏は、

  1. The National Quantum-Safe Network(NQSN)
  2. The National Quantum Computing Hub(NQCH)
  3. The National Quantum Fabless Foundry(NQFF)

というQEPの3つの研究イニシアティブを紹介しました。次のページでは、それぞれを詳しく紹介していきます。

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この記事の著者

寺部 雅能(テラベ マサヨシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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