電通デジタルは、ChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)を活用した、企業のカスタマーサービス革新のための支援サービス提供を開始した。
同社では、デジタル化社会における人間味のある優れた顧客体験を「Humanized Digital Experience(ヒューマナイズド デジタル エクスペリエンス/以下、HDX)」と定義し、その実現を支援する各種サービスを2023年3月から提供している。
同サービスはその一環として開始した、HDXを具現化するサービスの1つだという。
GPT-4をはじめとするAI技術を取り入れることで、これまで企業においてオペレーターが担っていたカスタマーサービスでの顧客応対を、自社や顧客の情報管理を担保しながら、AI自身が相談受付から必要手続きまでを完了させるところまで一貫して行うことが可能になるという。これにより、人間味をもったAI主役型のカスタマーサービスを実現し、「飛躍的な顧客体験改善」と「人的スタッフによる顧客対応コストの大幅削減」を目指すとしている。
同サービスを実現可能にするAIの技術進化
対応精度の向上
OpenAI社より開発・公開されたGPT-4は、パラメーター数(AIの性能を測る指標)が前バージョンのGPT-3から増加されるなどといった言語処理能力の向上により、インプットデータ解釈精度と回答精度が向上し、的確かつ自然なカスタマーサポート提供が可能になることが期待されている。 また近い将来、テキストの認識・生成に限らず、画像・動画・音声の認識・生成が可能な「マルチモーダルなAI(様々な種類の情報を利用し高度な判断を行うAI)」の実用化も期待されており、これにより「顧客の問い合わせに対して、わかりやすい音声や動画で回答する」といったカスタマーサービスの未来像を描くことができるという。
情報管理問題の解決
ChatGPTなどをカスタマーサービスに利用するためには、自社情報(商品・サービス情報、利用規約、手続きルールなど)や顧客情報を学習データとしてインプットする必要があるが、それらがGPTに学習され、他アカウントへの回答に利用されてしまうという懸念が指摘されてきた。しかしAI提供各社は、たとえば「顧客がAPIを通じて送信したデータは、顧客が明示的にデータ共有を選択しない限りはモデルの訓練や改善に使用されない」といったポリシーの打ち出しへと動いており、自社内限りで管理すべき情報に基づいたカスタマーサービス提供が可能となることが見込まれるとしている。
自社の各種APIの呼び出しによる手続き完結
今後、ChatGPT Pluginなど各種API呼び出しや検索クエリ実行を可能とする機能が一般企業に開放されることで、「顧客に対して、必要最低限の手続き(例:住所変更)とその窓口(例:住所変更フォーム)を案内する」ことだけに留まらず、たとえば「住所変更に伴い結婚により名字が変わる可能性があると推測し、名前変更に関する手続き・窓口を同時に案内する」など、対話インターフェイスの中で手続きを完結させることが可能になるという。
AI主役型カスタマーサービスを実現する具体的な支援内容
-
GPTの最新機能を踏まえての、カスタマーサービスの新たな在り方の構想策定
※「Responsible AI(責任あるAI)」の観点からの妥当性検討を含む - 迅速なプロトタイプ開発による、フィジビリティと有効性の検証(PoC)
- 正式サービス化のためのシステム実装、業務プロセス整備、利用規約策定
- 愛着が感じられるサービスとするためのクリエイティブワーク(キャラクター開発など)
- サービス運用からの学びとGPT進化を反映した継続的改善支援
- LINEなどのコミュニケーションチャネル、企業ドメイン知識、検索結果などとGPTの連携ソリューション開発 など
電通デジタルでは、自社内の業務効率・生産性の向上、およびクライアント企業に対するGPT活用支援のための知見・専門性の蓄積を目的とし、社内でのGPT-4の本格活用を進めているという。現在、社内ルールや手続きなどに関する社員の問い合わせ対応の自動化や、全役員による「各種文書の骨子把握」「ドラフト作成」などへの活用・社内情報発信をすることで、全社でのAI標準装備を推進していると述べている。