ソフトウェアエンジニアとそれ以外のマネジメントを“混ぜて”はいけない?
──倉貫さんがクラシコムの社外取締役になったのは、どのような経緯だったのですか。
倉貫義人氏(以下、倉貫):青木さんと初めて知り合ったのが6〜7年前でしたよね。
青木耕平氏(以下、青木):そうでしたね。そのときじっくりお話しして、後日、弊社メディアで対談のオファーをさせていただき、その対談直後の雑談で社外取締役の話題を持ち出しました。
というのも、僕らのECサイトは当初、既存のサービスやASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)を使って運営していました。だからエンジニアの必要性は特に感じていなかったのですが、2012年頃に1人目のソフトウェアエンジニアが入社しました。その後、システムを自社開発に切り替えることにしたのですが、すでに売上が10億円くらいになっていたので一大事でした。なんとかやり切った数カ月後に、そのエンジニアは辞めてしまい、その時点ではまだ経験が浅いエンジニア1人だけが残りました。
ソフトウェアエンジニアリングについての課題意識を持つようになったのはこのあたりからで、まずはエンジニアの組織をしっかり作らなければと考えていました。僕らと気の合いそうな優秀な人が「参加したい」と思うようなチームでなければ、一時的にシステムができても継続できないですから。
──そこで倉貫さんに白羽の矢が立ったということですね。
青木:「入りたくなるチーム」にするには、ちゃんとしたリーダーがいて、正しい意思決定ができて、正しい評価ができるということが不可欠だと考えました。でも、いきなりCTOを雇うのも難しく、まずは僕自身がエンジニア組織の意思決定をできる経営者に成長する必要があったんです。そのために色々と相談できる人として、倉貫さん以上の人はいないと感じました。課題が山積していたときだったので、本当にありがたい出会いでした。
──倉貫さんは、他の経営者からも同じような悩みを聞きますか?
倉貫:そうでもないんですよ。というのも、ソフトウェアエンジニアのマネジメントの難しさ、重要性に気づいている経営者が少ないからです。多くの経営者は事業部門の社員もエンジニアも同じようにマネジメントできると思っています。でも、エンジニア側からすると事業会社の本流の仕事と自分たちの仕事は違うので、肩身が狭かったりちゃんと評価されていないと感じたりして辞めていくケースが結構あるんですよね。
──青木さんは、そこに気づいていたというわけですね。