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不確実性とエンジニア組織のマネジメント

小野CTOがディベートで学んだ、二項対立の乗り越え方──BS思考のリスキリング、プロダクト思考とは?

【後編】ゲスト:株式会社クレディセゾン 取締役 専務執行役員 CDO兼CTO 小野和俊氏

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 前編では、大企業とスタートアップの両方の文化を知る小野和俊氏(株式会社クレディセゾン 取締役 兼 専務執行役員CTO 兼 CIO)と倉貫義人氏(株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長)が、それぞれの合理性や大企業がエンジニア的文化を受容することの重要性について体験を交えて語り合った。後編では、エンジニアを始めとするクリエイターのマネジメントがどのように成熟していくのか、事業経営者やマネージャーがなぜエンジニアやソフトウェア開発の考え方を知る必要があるのかについて、倉貫氏の書籍の内容も参照しながら語り合った。

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ディベートで培った、相手の合理性を全力で理解する姿勢

──前編では、大企業にとってスタートアップやエンジニアの文化は異質なものとして排除されやすいけれど、あえてその中に入ってコンフリクトを乗り越えていかないことにはDXは実現できないというお話がありました。

倉貫義人氏(以下、倉貫):小野さんこそが、組織にとって最初の異分子だったんじゃないですか。よく排除されずに生き残りましたね。

小野和俊氏(以下、小野):それは、大学時代にディベートをやった経験が役に立ちました。

 普通、自分の考えの裏付けになるようなことは本を読んだり調べたりするけれど、わざわざ反対意見の根拠を探すようなことって、あまりないでしょう。でも、ディベートでは対立する意見のどちら側に立って議論するかはコイントスで決まるので、「絶対こんなの違うよな」と思っていることでも徹底的に調べるんです。

倉貫:なるほど。反対側の意見の論拠がわかって、論破もできるし、それだけではなく逆に擁護もできるようになるんですね。

小野:そう。ディベートの議題になるようなことって、どちらの意見もそれなりに腹落ち感はあるんです。現実の場面でも、対立する意見のどちらかが圧倒的に正しいということは、ほとんどないですよね。

 例えば、大企業の中でも一番ブレーキがかかるのはコンプライアンスです。そのブレーキの理由について「過去にこういうトラブルが起きて、再発防止策を実施してもなお、こういうことが起きてしまったんです。だから、このルールがあるんです」といった経緯を聞けば、「なるほど」となります。「よくわかりました。今おっしゃったことは、僕も絶対大事だと思います。でないと、例えば社員や株主に対して十分な対策を打てていたという説明ができないですよね」と相手の合理性を全力で理解したうえで、「あなたの言っている大事なことを守りながら、僕がやりたいこともできる方法を、2つ考えてみたんです。これとこれ、どっちかできませんか?」という風に話せば、「ちゃんとご理解いただいたんですね」とか「どっちもいいですね」と相手の理解も得られて、意外とうまくいくんです。これって、よく考えれば当たり前の話ですよね。

倉貫:当たり前だけど、なかなかできませんよね。僕も、大企業で学んだことのひとつはそれだと思っています。大企業でやりたいことをやるには、自分の意志だけではできない。上司とか経営陣と話をしなければいけないわけですが、そのときに「エンジニアがアジャイルとかXPやりたいって言ってます」じゃ、上司に通じません。

 上司の立場に立って、「あなたはこういうことをやりたいんですよね、そのためには……」という話をするんです。その流れで「アジャイルというのがあるんですけど」と持っていったらわかってもらえることもあるし、なんなら「アジャイル」という言葉は最後まで出さずにアジャイルをやることもできるわけです。

小野:それはすごく大事です。「まだアジャイルやってない会社なんて、ありえないですよ」なんて言っていたら、建設的な議論はできません。こちらの主張をする前に、相手が大事にしようとしていることを理解して、そのプロトコルに合わせて話をする。そのためには、最近よく言うアンラーニングが必要です。自分の価値観を一度アンラーンして、相手がラーンしてきたことに完全に寄り添ってみれば、大体の場合は嫌な気持ちにならずにギャップを埋めることができますよ。

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DXとはソフトウェアビジネスに適した企業への変革であり、プロダクト発想への転換である

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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