なぜ今、データを活用した最適な人員配置が必要か
「勘・経験・度胸に基づいて行われていた非効率な人員配置を、データを活用しながら効率的な業務へと生まれ変わらせ、さらに運用をブラッシュアップしていく。その上で様々なデータを活用した最適な人員配置をすることが必要です」
講演で里井氏はこう主張する。その理由は3つである。
1つ目の理由は人手不足だ。企業規模を問わず、多くの企業で人手不足はトップの重要な経営課題である。経済産業省の「2020版ものづくり白書[1]」によると、製造業においては大企業も中小企業も4割を超える企業が人手不足に悩み、後継者不足に悩む企業も2割を超える。
それに対して、多くの企業が新卒や中途採用を強化することで取り組もうとしている。しかし、里井氏は採用市場だけに頼るのは危険だと警鐘を鳴らす。なぜなら、採用市場で各社が求める人材は似通っており、労働力人口の減少により日本の採用市場は分母の人材数自体が減っているからだ。人材の取り合いが発生しやすくなるため、採用活動だけでなく、既存人員の活用が重要になると話す。
2つ目の理由には、働くことへの価値観の変化が挙げられる。定年までバリバリ働くことが前提という画一化された働き方は当たり前ではなくなり、リモートワークや子育てとの両立といった、働きやすさを重視する方もいれば、社会への影響や自己実現といった働きがいを重視する方も増えている。株式会社L100の「2023年度卒業の就活生が企業を選ぶ上で最も重視するポイントの調査結果[2]」によると、就活生の40.3%が働きやすさを、24.3%が仕事のやりがいを重視している。今後、企業の主力となっていく若手人材の代表的な存在である就活生が働きやすさ・働きがいを重視する結果である以上、「従業員の働きやすさ・働きがい」を企業が意識し、その観点での評価を向上させる重要性というのはますます高まっていると言える。
「従業員の働きやすさ・働きがい」は、最適な人員配置によるところも大きい。従業員の希望をわからないまま、希望していない単身赴任を強い、キャリアのつながりを感じられない配置をしてしまえば、従業員のモチベーションの低下を招き、離職やそれに伴う人手不足が生じるリスクがあることは明らかだろう。
3つ目の理由には、競合他社との競争激化が挙げられる。前述の「2020年版ものづくり白書」によると、製造業の事業環境、市場環境の状況認識について伺ったアンケートでは気になる結果が上位に並んだ。具体的には「より顧客のニーズに対応した製品が求められている」「製品の品質をめぐる競争が激しくなっている」「原材料コストやエネルギーコストが大きくなっている」といった項目が目立つ。
製造業を取り巻く環境は厳しくなっているのだ。競合との競争に勝つためにも、最適な人員配置を行い「勝てる布陣」を作る必要がある。
[1]経済産業省「2020年版ものづくり白書(PDF版)」(2020年5月29日)
[2]株式会社L100「2023年度卒業の就活生が企業を選ぶ上で最も重視するポイントの調査結果」(PRTIMES「【23卒の就活生の企業選びの軸】1位は「働きやすさ」、しかし「働きやすい企業の探し方が分からない」と答えた就活生は78%と課題あり」、2022年3月21日)