人材の要件整理や評価・マネジメントは外部専門会社の知見を活用
それでは、データ活用部門のみならず、経営や現場も含めて、「データ活用組織」をどのように作り上げていくのか。まずは、前述したような三層の役割や関係性をもとに、組織全体の概念設計を考える。それができたら、
- 業務
- 人材
- マネジメント
について整理・検討し、実際に組織・各部門に落とし込んでいく。
1つ目の「業務」は状況により異なるが、2つ目の「人材」、3つ目の「マネジメント」は、ほぼどの業界・組織でも一定の共通化が可能だ。まず「人材」については、実現させたいことの実現に必要な業務を決め、その業務を遂行可能な人材の要件定義(スキルやマインドなど)を作成する必要がある。適した人材を実際に調達するには、外からの採用や社内人材の育成などがあり、その方法も決めなくてはならない。
そして、「マネジメント」としては、
- 意思決定ライン、役割権限、責任範囲の定義
- KGI、KPIの決定と管理方法の決定
- コミュニケーション、情報収集と共有の範囲・方法の決定
- メンバーのキャリアパスの整備
- メンバーの評価と報酬決定の方針・方法の決定
を決定し、実現することが必要だ。1~3まではどのような組織でも必要とされるもので、馴染みのある方も多いだろう。しかし、難しいのが、「4.メンバーのキャリアパスの整理」と「5.メンバーの評価と報酬決定の方針・方法の決定」だという。
白井氏は「分析データ活用は企業にとって『探索』であり、経験がない活動であるために、専門家のキャリアパスが企業内に存在しない。さらに評価と報酬についても、人事評価で技術力を見るのか、その技術はどう見るのか、成果をどう評価するのか、不明なことが多い」と語る。さらに給与についてもだ。既存のテーブルとの整合性をとらなければ社内に歪みが生まれ、中途採用市場の相場との整合性も意識しておかないと、育成・獲得した人材が社外に流出する恐れがある。
白井氏は、「正解がないとはいえ、バランスをとり、事前に決定する必要がある。ただし手間や時間がかかり、さらにデータ領域の知見も必要となる。その知見がなければ、人材要件はもちろん、評価やキャリアパスも決められない。調査から始めると数年単位で時間がかかり、そのうちに外部環境が変わって集めた人材も適合しなくなる可能性がある」と、自社でデータ活用組織を作る難しさを語る。
白井氏は、「あくまでデータ活用組織を作ることは『探索』であり、素早く実施すべきとはいえ、成果は不確実で失敗もあると考えた方がダメージも抑えられる。『深化』で得た利益を使って、できるだけ多くの施行機会をもち、芽が出たものを育てていくというやり方が合理的。そのためには、できるだけ簡単に始められて、撤退も簡単にできる方がいい」と語った。
そこで、白井氏が勧めるのが、自社と外部専門会社の人材を混合しハイブリッドチームを作るというものだ。この時、外部の専門人材は常駐するのがベストであり、これまで紹介してきた組織作りの難しさを解決しやすいからだという。常駐だからこそ、要件定義や採用時も専門家の意見を聞きながら進められる。さらにキャリアパスや評価も支援会社の知見を活用すれば、質の高い「探索」を低リスクで実施できる。撤退時や調整も、外部のスタッフなら簡単であり、フェーズに合わせて増減や入れ替えも可能だ。
また、常駐であれば、「データを使って解決できる問題を見つける」ことも容易となる。一般に自社の事業の収益構造や価値の流れ、社内機能、制約など、暗黙知も含めた事情がわかっていないと問題を絞り込めない。外部にいるとインプットや調査にコストがかかるが、常駐であれば、そうした情報にも触れていやすい。