「データ活用組織」は三層関係から見た“役割の明確化”がカギ
DXおよびデータ活用の推進では、経営の下に全社横断型で探索的な特命組織として「データ活用/DX推進部門」が作られることが多い。まずはその組織でDXやデータ活用を行って成果を出し、その後、少しずつ現場にデータ分析者を配置してデータ活用を浸透させていくという流れだ。
しかし、「データ活用組織」を構想するにあたっては、経営、データ活用推進部門、そして営業部門やマーケティング部門などのデータのユーザー・現場という三層で考えるとわかりやすいという。
まず、データ活用/DX推進部門が発足して行うべきは、
- 組織の目標
- 役割
- 生み出す価値
という概念設計だ。
この時のコツは、三層の関わりから目標を設定することだという。データ活用部門は他の階層と関わりなくして成果を出すことはできない。ということは、他の階層に対してデータ活用部門がどのように評価されればいいかを考えればいい。たとえば、経営者がデータを経営資源として捉え、現場がデータを業務に活用して利益につなげられている状態を理想とするなら、データ活用部門が目指すべき姿はこの2つを実現することといえる。
白井氏は、「経営に対しては、データから生み出された効果をモニタリングして報告したり、経営の示唆を与えたりすること。そして、現場に対しては、『データ活用部門に頼ったらうまくいった』という体験を積み上げ、信頼を勝ち取っていくこと。この両方が早期に実現すればうまくいきやすい」と語る。つまり、データ活用部門の役割は、「データを使って解決できる部分」と「解決したら事実上価値がある問題」の重なった部分を見つけて解決すること、あるいはその重なった部分を所管部門に解決させたり、支援したりすることというわけだ。
この時、データ活用推進部門が生み出す成果物は「中間成果物」となる。ビジネス課題を起点とする一連の流れの中では、データ活用アウトプットのフェーズであり、分析レポートや示唆、レポーティングダッシュボードなどが該当する。それだけでは売上にも利益にもならないが、この中間成果物を用いて現場で施策を行い、それによって何かがプラスとなれば、ビジネス上の成果や売上利益となる。たとえば、ビジネス課題が「プロダクト改善」ならば、データを活用した分析レポートからヒントを得て企画した施策によって、リテンション率やLVTが向上すれば「成果」となるわけだ。
白井氏は「それゆえに、データ活用推進部門が生み出す価値は、データを活用したアウトプットがビジネス成果につながることを意識する必要がある」と語り、「そうなるように設計する必要があり、つながったかどうかの検証まで、データ活用推進部門が担うことがポイント」と強調した。