デザイン・イネーブルメントに「態度」が求められる理由
デザイン・イネーブルメントの実践方法として、本村氏は「関係者と対話する」「具体化して試す」「正しくつくる」の3つのプロセスを紹介する。関係者と話し合い、議論の内容や関係者の思考をモノやカタチに具体化して解決策を模索し、その末に見出した解決策をさらに探究して、より効率的な姿に洗練していくことで、デザイン・イネーブルメントは実現に近づくという。
また、デザイン・イネーブルメントでは実践者や関係者の「態度」も重視される。デザインが取り扱うのは、一般に「厄介な問題」と呼ばれる、複雑で多様に解釈可能な問題であることも多い。そうした問題の解決策は、前例のあるものではなく、これまでに考案されたことのない新たな選択肢であることが少なくない。そのため、デザイン・イネーブルメントに臨む際には、不確実性を受け入れたり、ワークショップなどを通じて五感の作用に働きかけたり、複雑な問題を複雑なまま捉えたりといった態度が求められる。
さらに、これらの取り組みや態度を個人だけでなく、チームや組織といったレイヤーにも波及させるのが重要だ。
「『関係者と対話する』というプロセスは、チームのレイヤーでは『共創プロセスを整備する』、組織のレイヤーでは『デザインの仕組みを構築する』といった活動に姿を変えます。このように、デザイン・イネーブルメントのプロセスを踏まえながら、各レイヤーに適した活動を展開することで、組織全体でデザインを実践することができます」
ゆめみでは、こうした方法論をもとに6つの活動領域を設定。「戦略策定」「仮説検証」「標準化」「制作」「共創」「組織・設計」といった活動領域で、包括的にデザインを実践していくことで、デザイン・イネーブルメントを推進する。
さらに、ゆめみの特徴は、6つの活動領域におけるデザインの実践度を体系化していることだ。ソフトウェア開発などに用いられるCMMI(Capability Maturity Model Integration:能力成熟度モデル統合)をデザインの実践度を図る基準に応用。レベル0からレベル5までの6段階で各活動領域の実践度を定義している。具体的には、レベル0~1においてデザインは個人のレイヤーに留まっており、レベル2でチーム、レベル3以上で組織と、レベルが高まるほどデザインの領域が拡大していく。こうした指標を用いることで、企業は自社の状態を客観的に把握でき、どのようにデザイン・イネーブルメントを推進すればよいかを明らかにできる。