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ガートナージャパン、「生成AIのハイプ・サイクル:2023年」発表 企業の経営者が見直すべきこととは

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 ガートナージャパン(以下、Gartner)は、2026年までに80%以上の企業が生成AIのAPIやモデルを使用して、生成AIに対応したアプリケーションを本稼働環境に展開するようになるとの見解を発表した。

 同社が発表した「生成AIのハイプ・サイクル:2023年」では、多くのエンタプライズ・アプリケーションへの組み込みが増大している主要なテクノロジが特定されたという。具体的には、10年以内に組織に大きなインパクトを及ぼすと予測される3つのイノベーションとして、「生成AI対応アプリケーション」「ファウンデーション・モデル」「AI TRiSM(AIのトラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント)」を挙げている(図1参照)。

【図1】生成AIのハイプ・サイクル:2023年
【図1】生成AIのハイプ・サイクル:2023年
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生成AI対応アプリケーション

 生成AI対応アプリケーションとは、ユーザー・エクスペリエンス(UX)とタスク拡張のために生成AIを使用し、ユーザーが目指す成果の達成を加速および支援するもの。アプリケーションの生成AI対応が進むにつれ、従業員のスキルセットの幅は広がるとしている。

 Gartnerのディスティングイッシュト バイス プレジデントであるアルン・チャンドラセカラン(Arun Chandrasekaran)氏は、次のように述べている。

「生成AIが組み込まれた機能は現在、『text-to-X』のパターンが最も一般的です。これは、自然言語を使用するプロンプト・エンジニアリングによって、従来は専門的であったタスクに従業員が対応できるようにする『アクセスの民主化』を実現するものです。しかし、こうしたアプリケーションには、ハルシネーション(Hallucination:もっともらしいが誤った回答を返すこと)や不正確さといった障壁が依然として存在し、インパクトや導入の拡大が抑制される可能性があります」

ファウンデーション・モデル

 チャンドラセカラン氏は、「ファウンデーション・モデルは、大規模な事前にトレーニングされたモデルであり、幅広いユースケースに適用可能であるという点で、AIにとって重要な前進と言えます。ファウンデーション・モデルは、従業員の生産性向上、カスタマー・エクスペリエンスの自動化/強化、コスト効率に優れた方法での新プロダクト/サービスの創出を可能にすることで、企業内のデジタル・トランスフォーメーションを促進します」と述べている。

 ファウンデーション・モデルは、同ハイプ・サイクルの「過度な期待」のピーク期に位置している。2027年までに、ファウンデーション・モデルは自然言語処理(NLP)のユースケースの60%を支えるようになると、同社では予測しているという。

 チャンドラセカランは、加えて次のように述べている。

「テクノロジ・リーダーは、パフォーマンスのリーダーボードの精度が高いモデルから始めるべきです(例: Hugging FaceのOpen LLM Leaderboardなど)。加えて、優れたエコシステムのサポートがあり、企業が求めるセキュリティとプライバシーを適切に担保できる『ガードレール』が考慮されているモデルを採用すべきです」

AI TRiSM(AIのトラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント)

 AI TRiSMは、AIモデルのガバナンス、信頼性(トラスト)、公平性、確実性、堅牢性、有効性、データ保護を確保するフレームワーク。AI TRiSMには、モデルの解釈可能性と説明可能性、データとコンテンツの異常検知、AIデータ保護、モデル運用、攻撃に対する敵対的抵抗のためのソリューション、テクニック、プロセスが含まれるという。

 チャンドラセカラン氏は、「首尾一貫したAIリスク・マネジメントを行っていない組織は、プロジェクトの失敗や侵害といった弊害を被る傾向が格段に高まります。AIによるアウトカム(成果)が不正確/非倫理的または意図しないものであった場合や、プロセス・エラー、攻撃者からの妨害が生じる場合は、セキュリティ侵害、財務的/風評的な損失や法的責任のほか、社会的損害を招く恐れがあります」と述べている。

 AI TRiSMは、責任あるAIを提供するための重要なフレームワークであり、2~5年以内に主流の採用に達すると予測されているという。2026年までに、AIの透明性/信頼性/セキュリティを継続的に実現する組織は、採用やビジネス目標、ユーザーの受け入れに関して、AIモデルが導き出す結果の50%を改善できるとGartnerでは予測していると述べている。

 日本で生成AIの領域を担当する同社のディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト 亦賀忠明氏は、次のように述べている。

「これから生成AIは、さまざまなところに溶け込み、存在することが当たり前のものとなっていきます。生成AIは、インターネットと同様、またはそれ以上の進化をもたらし、企業のビジネス・スタイルや人々のライフ・スタイルを変えていくでしょう。現在の生成AIは、まだ初期の段階であり、2030年に向けて、AIエージェント、汎用人工知能(AGI)、超知性(スーパーインテリジェンス)へ向けて、さらなる進化が予想されます。それは結果として、すべての産業や企業に革命的な変化をもたらします。すべての企業は、生成AIの出現を単に業務効率化の話だけとして捉えるのではなく、むしろ、産業革命の始まりと捉える必要があります。企業はAIとの共生時代、New World、産業革命の時代に対応すべく、抜本的に企業、組織、業務の在り方、人々の役割と能力の見直しを図っていく必要があります。

これは、IT部門長だけの課題ではなく、経営者のチャレンジです。経営者は近年のテクノロジがビジネスにどのようなインパクトを与えるかについて、これまで以上に感度を上げて洞察力を高める必要があります。これから、多くの経営者は産業革命的な変化を目の当たりにしていきます。結果として、これからの経営者は、2030年以降も自社やパートナー、またそうしたエコシステムに属するすべての人々が存続、発展できるよう、自ら学び経験し、時代変化に即したリーダーシップを発揮する経営者とそうでない経営者に分かれていくでしょう」

多くの人々は、生成AIに代表されるテクノロジの革新的なトレンドを自分事として捉え、自らの知能、すなわち『人間知能』をより高める努力を開始することが重要になります。さらに、テクノロジとの共生時代の社会や個々の在り方を自発的に問う倫理観を醸成していくことがより重要となっていくでしょう」

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