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Biz/Zineセミナーレポート

パナソニックグループと日立製作所のデザインリーダーが語る、経営へのデザインの浸透と高度デザイン人財

【講演者】パナソニック ホールディングス株式会社 臼井重雄氏、株式会社 日立製作所 丸山幸伸氏

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 「データとデザインによる両利きの経営」をテーマにした「Biz/Zine Day 2023 Autumn」。そのクロージングセッションに登壇したのは、パナソニックグループと日立製作所でデザインリーダーを担っている、臼井重雄氏(パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 デザイン担当)と丸山幸伸氏(株式会社 日立製作所 研究開発グループ デザインセンタ 主管デザイン長)だ。本稿ではその内容をご紹介する。両氏はともに1990年の入社以降、プロダクトデザインからキャリアを始め、現在はそれぞれの企業におけるデザインの実践の牽引役を担っている。

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デザインが進化したからこその「美しさ」を再認識。その先の課題とは

──まずは、このあとのディスカッションの前提を揃える意味でも、お二人それぞれに「そもそも『デザイン』とは何か」をお聞きしたいです。

臼井重雄氏(以下、臼井):デザインの対象は拡大しつづけています。私の入社当初は「プロダクトデザイン」といって、色や形を扱っていたのが、顧客の体験をデザインする「UXデザイン」のフェーズが訪れ、いわゆる狭義のデザインから広義のデザインへと概念と対象が拡大しました。さらに現在は「ビジョンデザイン」という、未来構想のデザインにも取り組み始めており、いわゆるデザイン経営を始めています。

 それを踏まえると、デザインとはその対象が何であれ、様々な情報を統合し、最適化する手法のことではないでしょうか。あるいは未来を起点にした、または人を中心に据えた思考法のことかもしれません。

 しかし、それ以上に重視するべきは、アウトプットの美しさなのではないか、と最近改めて感じています。ロングライフやサステナビリティの文脈に照らし合わせても、美しいものや気に入っているものというのは、これまでも長く使われてきました。素材やエコシステムの議論も重要ですが、美しさを通じて、人間の心理にまっすぐ働きかけることを見直してもよいと考えています。

パナソニックにおけるデザインの進化
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丸山幸伸氏(以下、丸山):まさに同感です。かつては「印象」を組み合わせる色・形・仕上げの構成・構造を扱うスキルのみが、そして市場が飽和し始めた 1980年、1990年ほどからは、工学の知識を援用しながら「使いやすさ」を実現する力が必要とされてきました。顧客の「経験」のデザインが始まると、システムの流れを含めたサービス全体を考える力が求められるようになりました。昨今はビジョンなどの「目的・関係性」がデザインの対象になったことで、企業が社会に何を果たすべきなのか、世界にどう向き合うべきかを考える能力がデザイナーに求められるようになってきています。

 私も、美しいことを重要視しています。もちろん、「印象」「使いやすさ」「経験」の領域においても美しさが求められますが、「目的・関係性」についても、美意識を通じて自分たちが望む社会、描きたい暮らしを思い描くことが重要です。

日立製作所のデザインの進化
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臼井:重要なのは現在とビジョンの「隙間」をどうつなぐかです。ビジョンなどについての総論では同意できるときでも、採算がとれるかという部分へ移ると、意見が割れてしまいます。美しい未来やビジョンを描くことも重要ですが、その未来へどう移行するかを考えることが、今、デザインに求められています。

丸山:本当にそのとおりですね。これまでのデザイン手法だけで先へ進めると考えるのはおごりだと思います。デザイナー自身が変化する必要がある、大きな変化の局面へ来ていると感じています。システミックデザインなどはその一つのアプローチでしょう。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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