荏原製作所は2026年3月16日、製造現場の「暗黙知」をAIエージェントで形式知化し、継承・進化させる「知識駆動型DXプロジェクト」が3月1日付で発足し、同日から本格始動したと発表した。
本プロジェクトは、東京大学梅田靖教授が提唱する「デジタルトリプレット」概念を基礎に、荏原独自開発の設計開発支援システム「EBARA 開発ナビ」と自律分散型AIエージェント基盤「Ebara Brain」を融合。知識を軸とした新たなものづくり知識基盤の構築を目指す。
■ 背景と狙い
荏原は1912年創業以来、産業機械分野で社会インフラを支えてきた。一方、製造現場では「労働力人口減少」や「技術・知識継承不安」が喫緊の課題である。経済産業省の「ものづくり白書」でも能力開発・人材育成の最大の問題として「指導者不足」が挙げられている。熟練技術者の退職に伴う暗黙知の喪失が加速するなか、荏原は知識基盤の構築による持続的な競争力強化を目指す。
■ プロジェクト概要
データ活用中心の従来型DXにとどまらず、組織が持つ「知識」そのものを競争力の源と捉える「知識駆動型DX」の実現を目指す。「単なるAIツール導入」ではなく、知識構造の全体的再設計と、人・AIが共進化する基盤の構築が特徴である。
・デジタルトリプレット:
通常のデジタルツインが「物理空間」と「情報空間」から成るのに対し、「知識空間(形式知)」を加えた三層構造。現場のノウハウや暗黙知をデジタル空間と結びつけ、AIが知識を推論し継承する基盤となる。
・EBARA 開発ナビ:
設計・開発思考プロセスを構造化し、暗黙知を形式知として段階的に見える化するシステム。タスクレベルまでの情報整流、ナレッジの体系的記述によって、ものづくり知識の伝承・蓄積・共有を促進する。
・Ebara Brain:
自律分散型AIエージェント基盤で、オンプレミス型の知識推論基盤。形式知化やヒアリング・エキスパート・パーソナルの各エージェントが、現場知識の抽出・精緻化・活用・成長を担う。
■ 実証(PoC)
給水ユニット対象の概念実証では、人が時間をかけ整理した設計プロセスの85%を形式知化エージェントで生成でき、諸元間の関係性予測で精度83%を達成。AIと人間の協働により知識の組織資産化が確認された。
■ 今後の展開
同プロジェクトは2028年まで4フェーズで段階的発展を目指す。
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