パナソニック 空質空調社は、マレーシアのパナソニックAPエアコンR&Dマレーシア(以下、PAPARADMY)に建設した新棟を稼働させたと発表した。
この新棟では、パナソニック 空質空調社初となる「温水・空調同時マルチ実験室」など最新の設備を導入し、ASEANや欧州を中心としたグローバル向けに、空調機器の開発リードタイムを短縮、現地ニーズに合わせた開発を加速させるという。
ASEANでは人口増加に伴い、ビルなどの大型物件の建設が進み、業務用空調需要が堅調に推移。また、グローバルでは省エネ性能の高いヒートポンプ技術を使った空調やA2W、業務用領域における「水循環型空調」の市場が拡大しているという。こうした環境下でR&D新棟を稼働させ、研究開発を強化。新棟は現在あるPAPARADMYの実験および執務棟の建屋に隣接し、3階建てで延床面積10,900平方メートルになるという。3階には将来の増員に備えたオフィスを構え、1階から2階は様々な実験室を設置。概要は以下のとおり。
「温水・空調同時マルチ実験室」などの設備を導入し、開発リードタイムを短縮
通常は空調機と温水給湯暖房機でそれぞれ1台ずつ室外機が必要だが、室外機の設置スペースに制約がある場合、1台で両方運転可能な「Aquarea EcoFleX(アクエリア エコフレックス)」を南欧などの地域で展開。2022年の発売から、新たなカテゴリー商品として販売を強化しているという。
今回の新棟には、パナソニック 空質空調社として初めて空調機と温水給湯暖房機の運転効率などを同時に計測することが可能なマルチ実験室を設置。これまでは機器別に実験する必要があったが、一度に行うことで開発リードタイムを短縮するとしている。
また、空調機器でもIoT化による管理効率化や消費エネルギー削減が進んでおり、通信時に機器から発せられる電磁波などの法規適合性を確認するため、室内の壁面に電波吸収体を貼り付けた「半無響電波暗室」が用いられるという。これまで、A2Wや水循環型空調などの水を使う機器の計測は外部機関で行っていたが、今回、パナソニック 空質空調社として初めて、水の給排水設備を備えた半無響電波暗室を設けることで、社内で迅速に検証できる体制を整え、開発スピードを加速させると述べている。
これらを含め、現在の建屋に加えて実験室規模を約1.6倍に拡大し、研究開発を強化するという。
業務用空調の多様な実験が可能な設備を導入、現地開発機能を強化
現地の住環境やニーズを反映したビル用マルチエアコンのラインアップを拡大するとともに、オフィス・店舗用エアコンのインバーター化や、ダクト形、カセット形、壁掛け形などといった室内機開発を強化。また、欧州向けには業務用水循環型空調機の室内機であるファンコイルユニットもあわせて開発するとしている。
欧州向け自然冷媒搭載ヒートポンプ式給湯暖房機(Air to Water)の開発を加速
パナソニック 空質空調社は2023年5月に、自然冷媒R290を採用したA2Wを欧州向けに発売。今後の品揃え拡大に向けて、実使用環境での検証が可能なR290対応の実験室を設け、イタリア・ミラノに新設したR&Dセンターと連携しながら開発を加速していくという。