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10兆円市場で急伸するスペシャリティ医薬品の課題──Mediiが実践する“社会性”と“事業性”の両立

第3回 ゲスト:Medii 山田裕揮氏、筒井亮介氏

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医療現場で取り残されつつも医薬品市場で存在感が増す「希少疾患」

大角知也氏(以下、大角):医学博士を取得し、難病の専門医として活躍される中で起業された山田さんと、コンサルティングファームから転身した筒井さん、お二人が経営の舵取りをされているMediiはヘルスケア領域にイノベーションを起こしうる存在だと思います。まずはお二人のキャリアを簡単に伺ってもよろしいでしょうか。

山田裕揮氏(以下、山田):私自身が難病患者として苦労してきたことから、和歌山県立医科大学を卒業後、リウマチ膠原病内科の専門医として勤めてきました。その中で、いち医師として働くだけでは「難病」にまつわる社会課題の解決にはつながらないと考えるようになりました。医学生時代から勉強会を多く主催したり、難病の専門医として活動したりする中で、多くの優秀な専門医の先生方と出会い、学ばせていただきました。そのつながりを活かしつつ、専門性が増し新薬開発も著しいこの医療構造の限界を突破するための臨床医をサポートする仕組み作りをするため、2020年に起業しました。ただ、ビジネスを創る、新たな社会構造を創ることに関する知見が私になかったため、そのコアな部分のパートナーとして筒井さんに参画していただいています。

筒井亮介氏(以下、筒井):MediiではCOOとして事業サイドの責任者を務めています。前職では、戦略コンサルティングファームで通信領域の新規事業の立案や伴走支援に10年間従事してきました。とあるご縁で山田さんと知り合い、Mediiで取り組もうとしている事業の社会的な価値に共感し、事業としても成立しそうだと感じたため、2020年に参画しました。長年新規事業に携わってきていましたが、社会性と事業性の両立ができる事業はかなり稀有だと思っており、そこに中心となって携われることに魅力を感じています。

大角:山田さんは自身の経験から創業され、筒井さんは社会性と事業性が両立できると考えて参画されたとのことですが、現在Mediiで取り組まれている領域と、その領域が抱えている課題について教えていただけますでしょうか。

山田:Mediiで取り組んでいるのは、「希少疾患」の診断や治療に関する事業です。希少疾患は国内でも数百人、数千人しか患者さんがいないこともあり、医師も十分な経験があるわけではありません。希少疾患にも新薬は次々と出てきていますが、数十万人いる医師に対して数えられるほどの患者しかいないために医師が希少疾患を診断する経験は構造的に不足してきており、診断ができなかったり、診断ができたとしても薬剤を使いこなせなかったりしているのが現状です。たとえば高血圧や糖尿病のように患者さんが数百万人いる疾患の場合、ほとんどの医師が90点以上の対応ができるでしょう。しかし、私も実際に患者として感じていたのですが、希少疾患は60点未満、場合によっては診断さえすぐにつかず10点の対応となってしまうこともあります。

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 希少疾患は患者数の少ないものばかりですが、厚生労働省が定めた指定難病で341疾病、難病指定されていないものも含めると7,000疾病以上あるとされています。そのすべてを合計すると、全人口の5%、日本に約600万人の患者がいるともいわれているのです。そのほとんどが私たちのような働いている世代や、未来を担う子供たちなのですが、一つひとつが希少なため、これまで取り残されてきてしまった側面もあります。私たちは、そのような人たちが失った“当たり前”の人生を取り戻すことで、より社会を前に進められるのではないかと考えています。

筒井:山田から社会性の観点で話があったので、私からはビジネスの観点から補足します。日本の医薬品市場は10兆円規模なのですが、近年その中の構成比が変化してきています。2010年代までは先ほど例に出た高血圧や糖尿病のような患者数の多い「プライマリ」の医薬品が多数を占めていました。しかし、それらの薬品は安価な「ジェネリック」の医薬品に置き換わってきており、製薬企業は希少疾患を含む「スペシャリティ」に注力するようになってきました。この流れは2020年代以降加速し、2030年には市場の半分以上をスペシャリティが占めると予想されています。

 希少疾患のための薬が出てきており、市場の中でも多数を占めつつある。一方医療の現場では経験不足からその薬剤が使いこなされていない。私たちはその問題の解決に取り組んでいるのです。

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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