アナログの通販テクニックをデジタルに逆輸入して成功させる加藤公一レオさん。

オフラインの通販とダイレクトマーケティングの手法を、Web通販の世界に逆輸入し成功した、売れるネット広告社の加藤公一レオさん。チラシやDMなどのアナログのテクニックを、デジタルに活かす発想についてうかがった。

[公開日]

[取材・構成] BizZine編集部

[タグ] スタートアップ マーケティング ベンチャー

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商社マンから広告業界へ

―三菱商事の商社マンだったレオさんが、どうして起業にいたったかの経緯をお話いただければと。

もともとブラジル生まれでアメリカ育ちなんですが、大学入学とともに帰国し、卒業後三菱商事に入りました。「レオ」という名前は、獅子座生まれの僕に、父親がミーハーにつけた名前なんですけど、そのせいか超ミーハー志向(笑)。エリート志向なら三菱商事でよかったんですが、なんせ「組織の三菱」と言われるぐらいなので、個人ではスーパースターになれない。個人で目立つCMプランナーみたいなのになりたかった。ロケ地で「違う!違う!」とか言って「ロケ弁まだ?」みたいな世界に憧れました(笑)

ところが、広告代理店に転職し、アサツーディ・ケイに入ったらすぐ、「ダイレクトマーケティングに行け」と言われたんです。当時はまだ地味な部署でした。そこでネットだけではなく、チラシとかダイレクトメールとかを徹底的にやることに。そうこうするうちに、波が来たんです。ライブドアショック、リーマンショックがあり、どんどん日本が不況になり、3.11がありました。世の中不況になっていくほど、広告の費用対効果をクライアントが求めるようになりました。ダイレクトマーケティングが脚光を浴びて、大手メーカーがいきなり通販事業を始めたのです。10年近くその世界でオタクとしてやってきた僕に、波が来たということです。ある意味不況のおかげともいえます。そして、そのノウハウを元に起業しました。だから、正直いうと苦労してない(笑)。

売れるネット広告社 福岡オフィス

― 起業した時点ですでにノウハウや実績があったのでほとんどリスクがなかったということですね。

ネット通販を展開している大手メーカーの大半がうちのクライアントになりました。そこで、A/Bテストを徹底的にやり、データを貯めていきました。200億円以上の広告費を元に数百回に及ぶA/Bテストをおこなってきました。これが「売れるネット広告社」のコアのノウハウです。日本で一番A/Bテストをおこなっていると自負していまして、過去のテストの結果もすべてデータベース化しています。たとえばクライアントから「初回50パーセントと書くのと、初回半額と書くのでは、どちらのレスポンスがいいですか?」という質問があるとすると、「初回半額のほうがいいです」ということが即座に言える。普通どんなビジネスの世界でも、「こうやれば、必ずこう上がる」と言い切れませんよね。数値化されていませんから。だけど、ネットのダイレクトマーケティングは、100パーセント数値化される世界です。つまり、「小が大を食える」ということです。実際、「売れるネット広告社」の仕事の8割は電通・博報堂から奪ってきました。 世の中のビジネスの大半は、絶対大手企業のほうが強い。でもこの世界は徹底的に実力主義です。この仕事の大好きな理由はそれです。

―なぜA/Bテストがそれほど重要と考えたのでしょうか?

インターネット通販にとって、「広告専用ランディングページ」が重要で。そこをどんどん改善すれば売上が向上することが、ダイレクトマーケティングの経験からわかっていたからです。大原則として、ネット広告から誘導するサイトは「本サイト」ではなく、必ず商品ごとに完全に独立した「広告専用ランディングページ」にするべきなのです。「本サイト」がカタログだとしたら、「広告専用ランディングページ」はチラシみたいなもの。

ECが流行りだした2000年ごろは、通販業界なんてネットの世界からは見向きもされていませんでした。ECはせいぜいこの10数年の世界。それに比べると、ダイレクトマーケティングという手法は大昔からありますよね。チラシ、新聞、ダイレクトメールのはがきや封筒、コールセンターなどの手法は、歴史的にノウハウとして蓄積されています。だから、「100年以上の歴史があって、先人が培ってきた知識と知恵をWebの世界に逆輸入すれば成功する」と考えました。

チラシとランディングページ

―アナログ時代のダイレクトマーケティングのやり方を逆輸入する。それも一つのイノベーションですね

そう、例えば、ランディングページにはチラシのデザインの方法論が活かせる。また、フォローメールの手法も、ダイレクトメールの発想です。引上率、リピート率を上げるためにフォローメールからワンクリックで申し込みが出来るようにします。お客様ごとに個別のURLを記載したメールを送って、引上専用ランディングページやリピート専用ランディングページに誘導。ページのフォーム上には、初回申し込みをした際のお客様情報がすべて記入済の状態で表示されるようにする。これも、ダイレクトメールの返信用はがきがヒントです。ダイレクトメールのはがきを見ると、住所も名前もすべて記載されていて、郵便局に行ってポンと入れるだけで注文できるようになっている。それをネットに応用したということです。

―すべてアナログ時代の発想に、ヒントがあるということですね。

たとえばコンテンツバナーと呼ばれるものがあります。ある媒体に広告をだすときには、コンテンツにそっくりなバナーを作る。媒体に同化するような、記事っぽいやつを作ります。それはどこからヒント取ったかというと、新聞の記事広告からです。

もうひとつは、無料サンプルを申し込んだ人に対しての「確認画面でアップセル」というやり方。このタイミングでのアップセルが一番効果的です。確認画面に商品画像を置いて、住所名前電話番号などは、あらかじめ記入されている状態で、アップセルの購入ボタンを置く。これも、コールセンターの流れと同じです。 コールセンターの人が、無料サンプルを申し込んだ人に住所、氏名、電話番号を聞いて復唱して、最後に、「本商品にしませんか」と薦めるとか、その都度申し込む人に、「定期で買いませんか?」とご提案する。こういうコールセンターのロジックから逆輸入したということです。

ランディングページ(LP)の例

また、フォームを一体型にして遷移を短くするという考え方があります。多くの通販会社は、カート型になっていて、カートをどんどん横展開していくみたいな感じになっているのですけど、それを短くするというやり方。これも、つまりチラシの中に申込用紙が含まれているパターンの逆輸入です。広告の中にこの申込用紙があるというパターンの応用でフォーム一体型というロジックができました。経験上、これでコンバージョン率は約1.5〜2.5倍上がります。

メールマーケティングのコンバージョンをどうあげるか?

― その辺のノウハウを近著(『100%確実に売上がアップする最強の仕組み』)では、「クリック率」「コンバージョン率」「アップセル率」「レスポンス率」に分けて惜しみなく公開されていますね。

コンバージョンでいえば、インターネットの世界では、多くの会社はほとんど一斉配信でメルマガを送りますよね。昔のダイレクトマーケティングでは、お客さんごとに、申し込んだ日から使い切るタイミングで送るというのが基本中の基本でした。インターネットの世界と言うのは横着だなあと(笑)。メルマガを一斉配信で店長が、お客さんがいつ申し込んだかに関わらず、一斉配信で水曜日に送ってしまうとかやってしまいます。われわれはダイレクトメールのロジックと同じようにお客さんの商品を使い切るタイミングでメールを送っているんです。例えば7日分の商品を申し込んだ人が、一番次の2回目を買う確率が高いのは、使い切るタイミングなのです。そのタイミングに合わせて実は6日後に送ったり。例えば、30日分の本商品を買ってくれたお客様がどのタイミングで一番リピートするかというと、使いきる前の25日頃とかね。

売れるネット広告社 東京オフィス

こうしたテクニックを使いながら、そのシステムの仕組み全体から、CRMまでも手がけます。広告だけで見ていくならCPA(Cost Per Action)だけで判断すればいいですけど、CPO(Cost Per Order)を下げながら、顧客ごとの「引上げ」(見込みから既存)、「リピート」も「レスポンス」を向上させていくのが「売れるネット広告社」の強みです。

基本管理指標

社員評価もクライアントのBefore/Afterの向上率が指標

うちの会社は人事考課についてもユニークなんです。評価のポイントは、売上ではなく、クライアントへの貢献度になります。「クライアントのビフォー・アフターを把握して、いかに最大化したか」が評価指標になる。クライアントのCPA、引上率、CPO、購入単価、年間回転数、LTV、広告の費用対効果および獲得件数がいくつだったかというのを係数にしてそれを個人評価に結びつけています。営業やコンサルタントはもちろん、制作の人たちもでその増加率で評価されるという仕組み。唯一それで評価されないのは経理とか広報とかだけです。われわれは、クライアントを約束してますし、極端な話で言うとクライアントの費用対効果を上げて行けば、必然的に売上が上がって行くんですよ。やはりクライアント貢献が第一義で、クライアントの広告予算を「取りにいく」のではなくて、「お預かり」に行くというイメージです。それを半沢直樹じゃないですけど倍返しで返すというのがうちの会社のコンセプトです。それを繰り返していけば、絶対にもう永遠にクライアント離れないですし、われわれの利益もどんどん上がっていく。

「夢物語」を大きな表に描く

会社と社員の長期的な目標も数値化して計画表にしているんです。社員ひとりひとりの年齢や年収、会社の今後の計画まで年表にしているんです。

計画表

―これすごいですね。夢物語にしちゃ大きい。社員ひとりひとりの定年までと、レオさんのリタイアの予定まで書いてある(笑)

この期までには、これぐらいの社員数がいて、これぐらいの粗利を稼いで、これぐらいの支社があって、関連会社これぐらいあってほしいという思いを書いたんです。当然ながらこんな構想なんて夢物語と僕は思っていました。100パーセントかなわないと思っていましたが、今のところ最初の5年間でほぼ同じ。社員数も粗利も、今のところこの構想通りになっています。

僕自身は、会社の粗利を20億円にするか、49歳になれば引退するって書いてます(笑)。このとおり行かなくてもいいと思っているし、みんなが年収高くハッピーであればいいと思っているんですけど、こういう夢物語を持っておくのが大事だなと思います。こうして見ると結構人生って短いということに気づきますからね(笑)。

―こういう発想も、ダイレクトマーケティングの影響ですか?

一番の発想は、孫正義さんのような経営者。孫さんも九州出身で、最初は、いつか1000億を超える世界の会社にすると言って、回りからは相手にされなかったといいますが、実現させつつありますよね。会社は具体的な目標がなければ進まない。ダイエットと同じです。やはり大きな志で、目標を描けば、みんなそこまでたどり着こうという意識をする。曖昧な5年後とか10年後とかを描くより、具体化したほうが面白い。これも通販ダイレクトマーケティングをやっていたので、具体的な数字とかが好きだからです。

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