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ミレニアル世代の価値観が企業を成長させる――『世界でいちばん大切にしたい会社』シソーディア氏の経営論

原著者来日インタビュー:『世界でいちばん大切にしたい会社』

 2014年に翔泳社が邦訳を刊行した『世界でいちばん大切にしたい会社』では、利益を上げるなら社員、経営層、株主、顧客、そして社会などあらゆるステークホルダーの幸せを追求すべきだという提言がなされました。そんな本書の原著者の一人、ラジェンドラ・シソーディア氏にお話をうかがいました。

[公開日]

[著] 渡部 拓也

[タグ] 社会・公共 企業戦略

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 意識の高さを成長に変える。そんな謳い文句を数々の事例から実証し、理論立てて解説したのが2014年に刊行された『世界でいちばん大切にしたい会社』です。本書では、企業は意識の高い会社=コンシャス・カンパニーを目指すべきであると提案されています。

 コンシャス・カンパニーの具体的な条件とは、その会社に存在目的があり、ステークホルダーに対する思いやりがあり、愛されていることです。社会的、ひいては地球全体にとっていいことをしているという点も不可欠です。

 過労死やブラック企業問題が頻出するなど、昨今の日本の状況に鑑みれば、「コンシャス・カンパニー(意識の高い会社)」は企業経営層に強く訴えかけてくるキーワードでしょう。

 今回、原著者の一人であるラジェンドラ・シソーディア氏来日の機会に、インタビューをお願いしました。株主や顧客だけでなく、社員にも愛される会社を作り上げたいとお考えの人には、本書と合わせてぜひこのインタビューを一読されることをおすすめします。

コンシャス・カンパニーとブラック企業

 コンシャス・カンパニーの対義語はアンコンシャス・カンパニー。その中には社員を酷使するブラック企業も含まれます。経営層がそうと認識していなくても、実は社員にとっては……ということもありえます。では、アンコンシャス・カンパニーとはどういう会社なのでしょうか。

 その一つは、特定のステークホルダーにだけ目を向けている会社です。例えば顧客の利便性だけを考えていたり、株主の利益だけを考えていたりする会社――そこで蔑ろにされる存在は、けっしてその会社を愛することはありません。つまり、コンシャス・カンパニーであるにはあらゆるステークホルダーに目を向けていなければならないのです。

 多くの場合、蔑ろにされるのは社員(従業員)です。シソーディア氏も特にこの点を強調していました。ブラック企業であっても株主や顧客にはいい顔をしています。ですが、まず社員が幸せに働けているかどうかが重要だといいます。経営者は「社員が自分の子供だったらどうするか」と考えて接すべきだと主張されているのです。

 ノルマや成果の未達成に対して恐怖で縛りつけストレスに晒すのではなく、思いやりを持ち、その人のワークライフバランスを尊重することが、結果的にブラック企業的な経営よりも結果的に利益が得られる、社員の幸せと企業の利益は両立する――その言葉はたいへん印象的でした。

 また、もしそんな企業に所属してしまった人に対してのアドバイスとして、働き手としての権利を行使すべしと即答をいただきました。ウェブ上に企業のさまざまな評判が書かれている場合もありますが、まずはそういう企業を選ばないこと、所属してしまったらすぐに辞めるべきだとおっしゃいます。

 そうは単純にできない日本的な価値観もありますが、その点に関しては非常に一貫されていました。所属する会社を変えるか、会社内を変えるかしかないと。そして会社内を変えることはとても難しい……。であれば、答えは一つしかありません。

 辞めたら、SNSで社内環境を暴露してしまえばいいとも冗談交じりでおっしゃっていましたが、いま、企業の情報はさまざまな意味で「透明」になっています。ですから、そうしたことが積み重なれば、働き手の環境はよりよくなっていくのかもしれません。

ラジェンドラ・シソーディア氏ラジェンドラ・シソーディア氏
ベントレティ大学マーケティング教授

デジタル以後のコンシャス・カンパニーとは

 このように情報が透明化したのはデジタル環境の発展であり、ビジネスもそれに合わせて変化してきたとシソーディア氏はいいます。企業の悪評はあっという間にウェブに広がってしまうので、かつてのように情報統制や封鎖はできません。

 では、デジタル以後の企業は、どうすればコンシャス・カンパニーとしての地位を確立できるのでしょうか。そのキーポイントは情報の透明化と、ミレニアル世代の活躍です。

 情報の透明化とは、一つには、情報へのアクセスが用意になったことで企業が意図せずとも好評悪評問わずウェブ上に拡散してしまうことを指しています。デジタル以前なら一方向のコミュニケーションなので、広告などで情報統制することができましたが、いまやそれも不可能です。

 だからこそコンシャス・カンパニーは、情報は透明であるということを前提としたビジネスをしなければなりません。そして、何か悪いことをしてしまったのなら隠そうとせず、すぐに謝るべきなのです。誰しも自分のミスは取り繕い、隠したくなりますが、企業という大きな体はそうそう簡単には隠せません。

 情報の透明化を受け入れて、企業と向き合っている人々との双方向の「会話」をしなければなりません。どうすれば人々と最大限の繋がりを得られるのかを考えて実行し、そこで信頼関係を培うことで、自然と隠すべき情報もなくなっていくというわけです。もしSNSなどデジタル環境に慣れていないのなら、それが得意な若い世代、ミレニアル世代に任せればいいのです。

 ミレニアル世代とは、いわばデジタル環境が当たり前の社会で育った30代以下の層を表す言葉です。その最大の特徴は、お金や権力、地位など、これまで働き手が価値を見出していたものが動機やモチベーションにはならず、社会貢献やどれくらい人の役に立つか、地球の環境に優しいか、といったこれまで蔑ろにされてきたものによって行動を起こすというところです。

 40代以上の人たちからすれば、彼らには何の欲望もないように見えがちです。しかし、彼らがモチベートされる事柄は、すでにお気づきのようにコンシャス・カンパニーの条件ととても相性がいいものです。

 コンシャス・カンパニーは企業として利益追求を行ないながら、そのうえで存在目的に従って社会や地球環境に貢献する必要があります。ミレニアル世代はまさに、その価値観に沿ってやる気を漲らせ、行動を起こし、全力で取り組むのです。

コンシャス・カンパニーが長期の利益を約束する

 もはや人も企業もひたすら金銭的利益を追い求めるだけではダメになりました。シソーディア氏によると、10年単位で企業の経営状況を追うと、より「コンシャス」である企業ほど利益が大きくなっているといいます。現実に、数字目標だけを立て、稼ぐことを第一にする企業は業績が下降気味だともいいます。マーケットシェアNo.1を目指すと宣言した途端、種々のトラブルに見舞われた企業もあります。

 これからの企業はコンシャス・カンパニーでなければ成長できません。意識の高さこそが利益へと繋がるのです。シソーディア氏は幾度となく、ステークホルダー全員――顧客、株主、経営者など、そして誰より社員の幸せが企業の利益になるとおっしゃっていました。

 会社を経営する立場、部下を持つ方々には、ぜひ『世界でいちばん大切にしたい会社』を読んでいただきたく思います。短期的ではなく、長期的な視点で会社を成長させるにはどうすればいいのか、そのヒントが詰まっています。

協力:タトル・モリエイジェンシー

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コンシャス・カンパニー

著者:J・マッキー、R・シソーディア
訳者:鈴木立哉 解説:野田稔
発売日:2014年4月17日
価格:2,200円(税別)

序章 目覚め ジョン・マッキー
第一部 第一の柱――存在目的
第二部 第二の柱――ステークホルダーの統合
第三部 第三の柱――コンシャス・リーダーシップ
第四部 第四の柱――コンシャス・カルチャーとコンシャス・マネジメント

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