社会物理学が再定義する「良い都市の条件」とは?
本書では、社会物理学がどのように都市にアプローチできるかを語っています。それは、社会的絆がどのように分布しているか、社会的絆を流れるアイデアの流れの速さ、流れてきたアイデアを新しい行動として定着させる仕組み、仲間同士で行われるエンゲージメントから生まれる規範などが、ヒントになるとしています。そのアプローチを応用することで、何がわかるようになるのか。それは「良い都市の条件を満たした都市のデザイン」と呼べるようなものです。
では、その条件とは何なのでしょうか。本書では、経済や文化の中心地区で最大の探求行為が行われると同時に、地元の町の中で最大のエンゲージメントが行われるような都市だとして、スイスのチューリッヒの都市政策を紹介しています。
チューリッヒでは、まさに経済や文化的活動を発展させるために必要な新しいアイデアの流れが中心地域において大量に発生していながら、その活動に参加する人々は、周辺の町や村で自然に囲まれながら、近隣住民と対面での高頻度の交流があるような状態を維持している。そのことにより、チューリッヒは世界的にみても経済的・文化的な成功を収めているとしています。