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福岡生まれの「baserCMS」がベンチャーに支持されている理由

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baserCMS(ベーサーシーエムエス)という国産CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)がある。開発と運用の中心的な役割を担っているのは株式会社キャッチアップの江頭竜二氏。 リーマンショック後の窮乏から脱したのは、福岡のベンチャーコミュニティとオープンソースの力だったという。

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Webデザイナーとして食いっぱぐれ、オープンソースエンジニアに

-- 「baserCMS」というCMSは福岡のベンチャー企業の中で、けっこう定評があると聞きました。そもそもなぜこのCMSが評価されているのか?江頭さんが今、このツールを手がけていらっしゃる経緯などについて、お話を伺いたいと思います。

僕自身、もともとフリーランスのWebクリエイターとして起業したんですね。それで食いっぱぐれていたんですが、色んな人に協力してもらって、baserCMSというプロジェクトを立ち上げたんです。

最初はデザインで受注していたのですけど、あまりにも自分のデザイン力のなさを痛感して(笑)。デザイン力のなさというか、やっぱり、デザインって、ある程度の決まった時間内で最大限のクオリティを出せるのがプロだと思うんですね。それが僕にはできなかった。引き出しが少なすぎたというのがあったし。作るのに時間がかかってしまっていたので、採算が合わなすぎた。

-- スタートアップでWebを起ち上げる場合、CMSとしては、WordPress(ワードプレス)を使うのが一般的ですよね。独自のCMSを作ろうというきっかけは?

もともと得意だったプログラミングをベースに仕事を仕切りなおして、WordPressやMovable Type(ムーバブルタイプ)を使う事が多くなっていったんですが、企業サイトに必要なメールフォームなどの機能をお客様に納品した後で、再利用できるようにパッケージ化していきました。例えばWordPressで、ブログ記事のリストをトップページに表示したいというようなご要望がよくあったので、そのWordPressのRSSフィードを読み込めるような機能をパッケージングしたり、メールフォームをさらに使いやすくしたりとか。

その頃は、まだWordPressは機能があまり多くなく、企業サイトを制作するにあたり、多くのプラグインを導入する必要がありました。Web制作に携わる方々がもっと簡単に企業サイトに必要な機能を利用できるようにと、僕が作るパッケージにいろんな機能を付け足していきました。つまり、デザイン会社やWeb制作会社が企業から受託して納品する時に、必要な機能がはじめから揃っていて、さらに再利用がしやすいパッケージにしたかったんです。 いろんなお客様の要望を、福岡のコミュニティの人たちに相談しながら作っていった。そうしたら、福岡のベンチャーとして有名な、ヌーラボの橋本さんから「これは売れるレベルに達している」ってアドバイスをいただきました。ただ、その頃は、フリーランスでしたので、サポートや保守を考えると「販売」という形態は厳しいなと思い、橋本さんの助言もあり、オープンソースとして提供する事にしました。

オープンソースでやるにあたっては、橋本さんや通称「サト件」(仮)と呼ばれている「サイト研究会」とか、福岡のコミュニティのいろんな人に協力してもらって、2010年3月に安定版をリリースしてからのスタートになります。

レトルトカレーの日々なのに500万の出資を断った

株式会社キャッチアップ 江頭竜二氏

-- そこから順風満帆かと思いきや、苦労が始まる(笑)

結婚していて奥さんにはかなり苦労かけっぱなしだったんですが、baserCMSのリリース時期から揉めだして破局。その前の時期のリーマンショックの煽りをもろに被って、仕事の依頼も激減し、98円のレトルトカレーでしのいでいました。そんな時期、ある方から500万の出資の提案がありましたが、悩んだあげく、断ったんです。

-- それはまた何故?

その時期にすでに1000人ぐらいに使っていたので、何とかオープンソースとして続けたいと思ったからです。出資の話は、その方の会社に僕が入ってビジネスとしてやっていくことが条件でした。そうなると、「今までオープンにコミュニティベースでやってきたコンセプトが変わってしまうな」っていう風に感じて乗らなかった。それでますます窮地に陥っていって、消費者金融の限度額もぎりぎりで、もうヤミ金融に手を出そうかという時期に来たところで(笑)、福岡工業大学のサイトづくりという大きな案件が転がりこんだ。

-- 首の皮一枚でつながったわけですね。そこまでコミュニティの活動にこだわった。

その案件で何とかつなげることができました。 その後も受託案件をおこない、福岡工業大学のサイト制作で尽力してくれたメンバーを正社員として雇い入れる為、法人化したのですが、またまた資金余力が枯渇しかけるという状況になった。その時に福岡でWebデザインで強いと評判のディーゼロさんが、baserCMSを積極的に活用して案件を作っていただいて、大手企業の事例が出来てきました。サンポー食品、日本赤十字社などです。

福岡コミュニティからの支援、そして継続のためのNPO設立へ

-- 福岡のWebデザイン会社が、baserCMSを支持する理由は?

baserCMSのキャッチフレーズは「コーポレイトサイトにちょうどいい」というものです。たとえば、企業サイトのようなブランディングをメインとしたWebサイトにおいて、必要な機能をあらかじめ最初からパッケージにしているっていうところです。福岡は、いろんな方々が、プログラム言語や、デザイン、ディレクションなど様々なジャンルのコミュニティを始めたりという熱い風土があります。そういうコミュニティの人々が福岡発オープンソースCMSという事で、応援してくれました。福岡の土壌がなかったら、たぶん、ここまでこれなかっただろうなと思います。

今では、応援してくださる方が長く安心して使えるように、コミュニティを支援する団体として、NPO法人ベーサー・ファウンデーションを設立し、「止まらない」、「潰れない」プロジェクトを実現しました。今後は、CMS自体のさらなる機能強化を行い、もっと多くの利用者に、Web制作の現場で有効活用できるツールにしてきたいと考えています。

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