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JPX日経400社の報酬総額水準、CEOは1.1億円 前年から5.4%増加──デロイトトーマツ調査

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 デロイトトーマツグループは、日本企業における役員報酬の水準や株式報酬制度などの導入状況、役員指名、コーポレートガバナンス領域も含めた中長期的な企業価値向上に資するトピックを包括的に調査した「役員報酬サーベイ(2024年度版)」の結果を発表した。

CEO・社長報酬総額の推移

 JPX日経インデックス400企業におけるCEO・社長の報酬総額(中央値)を見ると、2024年は1億1324万7000円と、前年の1億742万7000円から5.4%増となった。

 2021年から時系列で見ると、3年連続での上昇であり、報酬水準の見直しや株式報酬導入などの制度改革が実施された結果と見られる。

 CEO・社長の報酬水準(標準額)を引き上げた89社の理由を見ると、「ベンチマーク企業の報酬水準上昇を踏まえた見直し」(58.4%)が最も多く、「役割・責任範囲の拡大による見直し」「業績状況を踏まえた水準の見直し」(いずれも24.7%)も続いて多く挙げられた。

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インセンティブ報酬

 短期インセンティブ報酬を導入している企業の割合は、全体で74.7%(952社)で前年(73.7%)と同水準、プライム上場企業における導入割合は88.1%(577社)であった。全体で種類を見ると、「損金不算入型の賞与」の導入企業が58.3%(555社)で、前年(55.8%)に引き続き最も多かった。設計の自由度が高いことが背景にあるという。

 長期インセンティブ報酬(株式関連報酬)を導入している企業の割合は全体で79.0%(1007社)で、前年(76.8%)より2.2ポイント増加。プライム上場企業に限ると91.9%(602社)で既に導入が進んでおり、定着が見られる。

 採用されている長期インセンティブ報酬の種類は「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」が35.8%(456社)で最も多かった。次いで「業績連動型株式交付信託」を採用している企業が14.7%(188社)と続いた。

 なお、長期インセンティブ報酬を導入している1007社のうち、社外取締役向けにも長期インセンティブ報酬を導入している企業は12.1%(122社)にとどまった。

 また、従業員向けに長期インセンティブプランを導入済み、ないし導入を検討している企業は全体の約半数(48.2%)に及んだ。

 導入済み企業のうち、譲渡制限付株式が94社(27.9%)、次いで業績連動型・非連動型株式交付信託が合算で87社(25.8%)となっている。社員のエンゲージメントレベルの向上や人材の確保、リテンションの観点からも今後の導入増加が見込まれる。

業績指標

 トップエグゼクティブの報酬に採用されている指標は、「営業利益」が、短期インセンティブ報酬(42.7%)、長期インセンティブ報酬(40.1%)ともに最も多かった。

 短期インセンティブ報酬では「当期純利益」(29.4%)が続き、売り上げや利益をKPIとすることが一般的となっている。長期インセンティブ報酬では、「ROE」(23.8%)が続いた。

 また、資本コストや株価を意識した経営にともない、株主価値を捉える指標の採用が徐々に増えてきており、「TSR」が7.6%(前年比2.9ポイント増)、「EPS」が2.7%(前年比0.1ポイント増)であった。

 近年の気候変動対応や人的資本経営の要請にともない、ESG指標を役員報酬評価に採用する企業も年々増加している。

 短期もしくは長期インセンティブ報酬のいずれかを導入し、それら報酬にESG指標を連動させる企業割合は、プライム上場企業で23.9%(前年比6.5ポイント増)、売上高1兆円以上の企業では63.9%(前年比2.8ポイント増)に達した。大手企業を中心に、役員報酬を介したESGに対するコミットメントが仕組み化されてきたといえる。

 採用が多いESG指標は「従業員エンゲージメント」80社、「CO2排出量」67社、「女性管理職比率」56社、「GHG排出量」50社と、気候変動および従業員関連指標が先行している。

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マルス条項・クローバック条項の導入状況

 JPX日経インデックス400企業におけるマルス条項導入済み企業は64.8%(92社)で、前年(54.0%)より10.8ポイント増加した。

 一方、クローバック条項導入済み企業は24.6%(35社)で、前年(23.7%)とほぼ同水準であった。現在検討中の企業を含めるとマルス条項で69.0%、クローバック条項で35.2%の企業にいたる。

 米国・英国では業績連動報酬に対するマルス条項・クローバック条項の適用は一般的となっており、大手企業を中心に、日本においても導入が進んでいる。今後、報酬水準・インセンティブ報酬比率の上昇にともない、導入がさらに進んでいくと見込まれる。

社外取締役の質・量の確保

 全取締役に占める社外取締役の人数割合が3分の1以上の上場企業は89.2%(前年比4.1ポイント増)であった。過半数を確保している上場企業は19.4%(前年比3.8ポイント増)で、社外取締役の登用増加により、独立した監督体制が強化されていることがうかがえる。

 売上高1兆円以上企業における社外取締役の報酬総額水準は、中央値で1480万円と、前年から40万円増加した。今後、優良な人材を確保・育成することが重要となるが、上場企業において、社外取締役の人材プールを確保していると回答した企業はわずか4.5%(50社)にとどまった。

 また、社内取締役の30%以上が女性である上場企業は2.4%であるのに対し、社外取締役の30%以上が女性である上場企業は45.4%(前年比6.7ポイント増)に及んだ。女性社外取締役の登用による多様性確保に、多くの企業が依存している現状であるといえる。

 社内女性役員候補人材の育成などを通じて、社外取締役への依存から脱却するための対応が、社会全体で必要だという。

任意の報酬委員会、指名委員会、その他の委員会

 指名委員会など設置会社を除く上場企業のうち、任意の報酬委員会を設置している企業の割合は83.1%(900社)と前年より1.5ポイント増加し、任意の指名委員会を設置している企業の割合は78.7%(852社)と前年より1.7ポイント増加した。

 このうち、663社は任意の指名・報酬委員会であり、指名・報酬に関する機能を両方もっている。

 報酬および指名領域以外で企業が任意に設置している委員会として多く回答されたのは、リスクマネジメント委員会(59.8%)、サステナビリティ委員会(53.2%)であり、サステナビリティを取り込んだガバナンス体制の強化が進んでいる。リスクマネジメント委員会は前年比4.5ポイント増、サステナビリティ委員会は前年比8.6ポイント増の変化が見られた。

 2023年6月にIFRSサステナビリティ開示基準が公表され、日本でもサステナビリティ基準委員会(SSBJ)による2024年度中の基準策定が目指されている。サステナビリティの取り組み開示は待ったなしの状況であり、サステナビリティ委員会の設置・経営との連携がさらに進んでいくと考えられる。

海外子会社ガバナンス

 海外子会社を有する企業において、現地CEO・社長の報酬を国内親会社のCEO・社長が決定する企業は46.6%と、約半数に及んだ。CEO・社長以外の現地役員の報酬については、現地CEO・社長が国内親会社と協議しながら決定する企業が34.8%で最も多かった。

 海外子会社役員の報酬決定に親会社が関与する432社に、報酬ガバナンスの課題を尋ねたところ、「グループ全体で共通の報酬評価制度の枠組みが整備されていないこと」を挙げる企業が52.8%で最多となった。

 次いで、「現地の報酬制度にかかる税制・法令などの情報収集が困難」と感じている企業が43.3%、「現地における適切な報酬水準がわからない」を挙げた企業が36.1%であった。多くの企業で海外子会社のガバナンスに関し、課題を有している。

人的資本経営の取り組み

 人的資本経営の取り組み・検討を実施している(完了含む)企業は70.0%(893社)で、前年(60.5%)より9.5ポイント上昇した。人的資本経営の取り組みが着実に進んでいることがうかがえる。

 一方、検討・計画に着手できていない企業は24.9%(前年31.0%)であり、中でもグロース上場企業および非上場企業は、その割合が過半数に及んでいる(それぞれ、51.5%、58.0%)。検討・計画に着手できていない企業の割合は前年より減ってはいるものの、人的資本経営の取り組みは今後も継続して取り組むべきテーマの1つとなっている。

 人的資本経営の検討・取り組み内容は、「業務のデジタル化推進」が4.1点、「時間や場所にとらわれない働き方の施策立案」が3.7点、「ハイブリットワークの推進」が3.7点と先行する結果であった。

 新型コロナウイルス感染症拡大が収束した今もなお、働き方改革の影響が寄与しているといえる。一方、CHROの設置やリスキル(いずれも2.1点)は依然として未対応企業が目立つ。

 また、人的資本経営の検討・取り組みを進める企業における人的資本経営の課題としては、「経営戦略実現に資する人材の確保・育成」が48.4%、「社員のエンゲージメントレベルの向上」が39.1%、「経営戦略と人事戦略の連動」が38.3%が挙げられた。

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調査概要
  • 調査期間:2024年6~7月
  • 調査目的:日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度やガバナンス体制、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況などの現状に関する調査・分析
  • 参加企業数:1275社(集計対象役員総数2万3214名)
    • 上場企業1116社(うちプライム上場企業655社)、非上場企業159社
  • 参加企業属性:製造業526社(うち医薬品・化学113社、電気機器・精密機器114社、機械83社など)、非製造業749社(うち情報・通信169社、サービス152社、卸売り107社など)
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