組織文化の変革には10年かかる
宮森:お話を伺っていると、お二人の関係性が本当に素晴らしいですね。どのようにしてCEOとCHROが何でも言い合える関係を築いてきたのでしょうか。
髙橋:私たちの性格が似ているというのがありますね。FFS診断でも、近いタイプ同士の方が話しやすいですし、右上のタイプなので、何か言われてもあまり気にしません。
今井:それに加えて、戦略的にこうした関係を作ってきた部分もあります。先ほどお話したように、髙橋にツッコミを入れるのが私の役割だと考えていました。それで「どこまでツッコんでも大丈夫なんだろう」と探りながらやっていたら、結果的にどこまででも大丈夫でした。
髙橋:全然大丈夫です(笑)。
今井:もう一つ大事なのは、「企業価値向上のために文化がいかに重要か」という共通認識を持っていることですね。
髙橋:その通りです。企業価値は「戦略 × 個の力 × 企業文化」の掛け算です。そして、実現したい文化というのは、社員が言いたいことを言える文化、そしてポテンシャルを解き放てる文化です。そういう場の雰囲気がない限り、個の力は発揮されず、エンゲージメントも高まりません。
私は、エンゲージメントの高さが企業価値に直結すると考えています。そしてエンゲージメントを高めるためには、まず企業文化をしっかりと作り上げる必要があります。
今井:私もそう思います。特に、うちは研究開発型の企業で、その価値の源泉はイノベーションにあります。新しいことを試すためには、多様性をしっかりと受け入れられる文化が鍵になります。だからこそ、企業文化が価値創造の土台であると捉えています。
宮森:目指す企業文化が醸成されるまで、どれくらいの時間がかかると考えていますか?
髙橋:私は社長になったときから「最低10年はかかる」と言っています。それは私自身が10年続けるという意味ではなく、指名諮問委員会にも「私はいつクビになっても構いません。ただし、次のリーダーはこの文化改革を続けてくれる人を必ず選んでください」と伝えています。
これもよく言うことですが、変革というのは「事前の非連続性と事後の常識性」がポイントです。
たとえば、私が社長になったとき、新年の挨拶で「ジーンズでOK」と宣言しました。最初は「こんな服装で会社に来ても大丈夫ですか?」と受付で確認する社員もいましたが、今では短パンで働く社員がいるほどです。こうした非連続的な変化を、少しずつ常識にしていくことが重要です。
パーパスとバリューも同じで、本当に浸透するまでには、毎年少しずつ仕掛けを増やしていき、10年後にようやく「文化が変わった」と実感できるようになるのではないでしょうか。
宮森:本当に覚悟を持って取り組んでいらっしゃることが伝わりました。髙橋さん、今井さん、今日はありがとうございました。