プロジェクトにおける「人」の不確実性をコントロールするには
続けて堀氏は「では、プロジェクトにおける不確実性とは、具体的に何を指すのでしょうか」と議論を展開する。プロジェクトの中で不可避的に発生するインシデントは一体何から生まれているのだろうか。
堀氏は「人にこそ不確実性の本質があると考えています」と話す。予算や成果物など、モノやカネは指標が明確であり、比較的、可視化が容易だ。それに対して、人のマインドは可視化が難しく、その分コントロールが難しい。その具体例として、堀氏は自身が手がけたプロジェクトの中で人に起因する不確実性のモデルケースを紹介した。
その1つが「対立構造」。新サービスの立ち上げにあたり、部門横断のプロジェクトが組成されたが、ブランドリフト[1]をKGIとする部署と売上をKGIとする部署との間で対立構造が発生し、部署間やプロジェクトメンバー間で人間関係を含む齟齬が表面化。結果的に、双方の部署でKGIが未達に終わり、プロジェクトチームを再編するに至ったという。

また「否定と責任転嫁」もモデルケースの一つだ。あるプロジェクトの途中で組織変更が発生し、プロジェクトオーナー(PO)とプロジェクトマネージャー(PM)が変更されたが、前任者がプロジェクトの発案者であったため新たなPOやPMは不満を募らせ、前任者の否定と責任転嫁を繰り返した。その末に、プロジェクトの立て直しが不可避になり、堀氏らが第三者の立場で介入することとなった。

こうした事例を踏まえて堀氏は、人に起因する不確実性を解消するには「いかにメンバーのマインドのベクトルを一致団結させるかが極めて重要です」と解決策を示した。
「プロジェクトにおける不確実性を解消する手法としてはチームアラインメントが有効です。アラインメントをアメリカの経営学者であるピーター・センゲは『メンバーのベクトルを合わせて協力体制をつくること』と定義しています。つまり、何らかの手法により、メンバーのスキルやマインドを可視化して相互に理解しあうことで、チーム内のベクトルを1つの方向にまとめ上げることが重要なのです」
そして、このときに有効なツールとして、堀氏はSAKUSEN TOKYOが用いているプロジェクト管理手法の「Project Management 6P elements(商標登録出願中)」を挙げた。
[1]ブランドリフト:ブランドの広告に触れたユーザーと触れていないユーザーを比較し、触れたユーザーがブランド認知や購買意欲が高まっているかどうかを測る指標