Laboro.AIは、気象庁気象研究所が実施する「AI技術を活用した気象レーダーによる顕著現象の検出と情報処理の高度化に関する研究開発」の研究開発委託先として採択された研究テーマの一つである「複数の異なる深層学習モデルを活用して竜巻渦を探知する技術の高度化」に関する開発を実施し、従来精度を上回る成果が得られたと発表した。また、本件を含む研究論文が、土木学会に採択されたとともに、同学会の「2024年 AI・データサイエンス論文賞」を受賞したこともあわせて発表した。
気象研究所では、過去の気象レーダーデータから竜巻のパターンを抽出し、深層学習モデルを用いて竜巻を自動検出・追跡するための技術開発を進めていたが、複雑かつ特殊な条件下では精度の高い検出が困難だった。そこで、現在気象研究所で採用されている深層学習モデルに加えて、複数の深層学習モデルを開発・比較評価することを通して、竜巻の探知技術の高度化に取り組んだという。
竜巻渦検出のための深層学習モデルの開発にあたり、Laboro.AIが実施した内容は以下のとおり。
1.データの準備とVGGモデルの再学習
気象研究所は2010年から2019年までの9つの空港における過去データを元に、訓練用および検証用の学習データとして計13,000を超えるデータを新たに作成している。Laboro.AIでは、このデータを用いて現在気象研究所で採用されているVGG(Visual Geometry Group)モデルの再学習を実施した。
2.新しい深層学習モデルの開発
上記の再学習させたVGGモデルに加えて、新たに以下3つのAIモデルを開発。
- MobileNetV3を採用し、精度を維持しながら計算量とモデルサイズを削減することを企図したCNN(Convolutional Neural Network)モデル
- EfficientNetV2を採用し、ネットワークを効果的にスケールアップするための学習アプローチをとったNAS(Neural Architecture Search)モデル
- SwinTransformerV2を採用し、長距離依存関係をより効果的に捉えるために自己注意機構を組み込んだViT(Vision Transformer)モデル
3.性能評価と比較
上記3モデルの再現率と適合率のスコアを、ベンチマークとしたVGGモデルと比較したところ、2.NASモデルおよび3.ViTモデルが、適合率-再現率曲線下面積(AP)の点で従来モデルを上回り、竜巻渦の発生を正しく識別する精度が高いことが示唆された。
4.CPUとGPUにおける推論時間の比較
新たに開発した上記3モデルについて、CPUとGPUにおける推論時間の比較の結果、CPUでの効率的な推論のために設計された1.CNNモデルが妥当な性能を示し、エッジデバイスやモバイルプラットフォームを含む幅広いデバイスに竜巻渦検出モデルを展開することができる可能性が示唆された。
なお、本件を含むBRIDGEプロジェクト全体の研究内容を記した論文が土木学会に採択され、2024年11月に公開されている。Laboro.AIが開発支援を行なった内容は、当論文の第4章1節に記載されているという。
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