帝国データバンクは、「新卒社員の初任給」について企業へアンケートを行った。
企業の7割が初任給を引き上げ、平均引き上げ額は9,114円
2025年4月入社の新卒社員に支給する初任給を前年度から改定したか質問したところ、初任給の引き上げ有無を回答した企業のうち、「引き上げる」企業の割合は71.0%、「引き上げない」は29.0%だった。
引き上げ額を回答した企業では、引き上げ額「1万〜2万円未満」の割合が41.3%で最も高く、次いで「5,000〜1万円未満」が30.7%と続いた。なお、初任給を引き上げる平均額は9,114円だった。
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初任給を引き上げる企業からは、「物価上昇の中、社員の生活のために初任給を引き上げる」(中小企業、情報サービス)や「最低賃金の上昇に合わせて引き上げている」(小規模企業、農・林・水産)といったコメントが上がった。また、「応募が来ないため引き上げるが、固定費が上がるのは中小企業にとってかなり死活問題」(小規模企業、建材・家具、窯業・土石製品製造)のように、コストアップにより経営が圧迫されるとの声も寄せられた。
他にも、「初任給の引き上げにともない、既存の若手社員との逆転現象が起こらないよう給与の引き上げを行う」(大企業、飲食料品・飼料製造)や、「物価高による既存社員の生活への影響を考慮して全体の賃上げも行う」(中小企業、情報サービス)のように、初任給の引き上げを契機に、既存社員の賃上げを行う予定または今後の課題としてあげた企業も多数あったという。
一方で、初任給を引き上げない企業からは、「物価が上昇中で利益が出ない状態のため、初任給引き上げの原資がない」(小規模企業、不動産)といった、厳しい様子がうかがえた。また、「前年度にすでに引き上げたため、本年度は行わない。その代わりに既存社員の賃上げを行い、新卒社員との差をつける」(中小企業、専門サービス)といった声も寄せられた。
初任給を引き上げる中小企業の割合高まる
「初任給を引き上げる」と回答した企業の割合を規模別に見ると、「中小企業」は71.4%で、「大企業」の69.6%よりも高くなった。一方で、「小規模企業」は62.2%と全体を8.8ポイント下回り、規模間で格差が見られた。
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「大企業」からは「昨年引き上げたため、今年は様子を見る」(専門サービス)といった声がある一方で、「中小企業」からは「最低賃金の改定を参考にして初任給の引き上げを行う」(建設)や、「大手企業とは違い苦しいが、元々支給額が低いため、物価高に合わせた賃上げを検討」(飲食料品卸売)といったコメントがあり、厳しいながらも大企業を中心に加速している賃上げの流れについていくために、中小企業では初任給を引き上げる動きが強まっているという。
しかし、資金余力が比較的乏しい「小規模企業」においては、「物価上昇や薬価改定により減収減益のため、初任給引き上げは行わない」(医薬品・日用雑貨品小売)などの声が聞かれ、経営が苦しいため引き上げに踏み切れない企業は少なくなかった。
初任給「20万円未満」は24.6%で、前年度から10.4ポイント減
2025年度の初任給の金額を聞いたところ、「20万〜25万円未満」の企業の割合が62.1%で最も高く、前年度比4.7ポイント増となった。次いで「15万〜20万円未満」(同8.7ポイント減)が24.6%で続き、「25万~30万円未満」(11.4%)は2ケタへ上昇した。
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「20万円未満」は24.8%と、前年度(35.2%)より10.4ポイント低下しており、初任給の上昇傾向がうかがえる。大手企業で増えている「30万円以上」は1.7%と前年度(0.2%)から1.5ポイント上昇した。
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