パーソルイノベーションは、東京大学 松尾研発スタートアップのBAKUTANと、AI技術ならびにマーケットデザインの理論研究に基づく、エッセンシャルワーカー領域における人材紹介事業の、新たなマッチングアルゴリズムの共同研究を開始する。
同共同研究では、キャリアアドバイザー(以下、CA)が紹介業務で行う実践的な判断プロセスに即した、採用・不採用履歴をはじめとする時系列情報も考慮した動的な求人・求職者マッチングアルゴリズムの開発を目指すという。

従来型の静的なマッチングが抱える課題
これまで内部労働市場(社内異動・配置等)では、マッチング理論に基づく「社内ポストと社内人材のマッチングを最適化する手法」が一定の成果を挙げている。
一方で、外部労働市場(転職)では採用・不採用という意思決定が連続して起こる、あるいは求職者・企業の条件がダイナミックに変化する、といった時系列情報・不確実性が入り込み、従来の静的条件を仮定とするモデルでは適切に扱えないことが既存理論の社会実装における課題となっている。
また、現状人材紹介領域で多く実装されているレコメンデーションアルゴリズムは、履歴書情報・スキルなど静的データを中心に扱うが、過去の不採用・内定取消し・入社後の早期離職といった動的な履歴、すなわち「求職者のジャーニー」は各CAの現場の知識や経験に頼らざるを得ず、体系化が進んでいないのが実情。
AIとマーケットデザインに基づく動的マッチングアルゴリズムの研究
同共同研究では、BAKUTANが持つAIならびにマーケットデザインの研究知見と、パーソルイノベーションが持つこれまで培ったマッチングノウハウを掛け合わせた動的マッチングアルゴリズムの共同研究を行うという。まずはエッセンシャルワーカー層の紹介業務にフォーカス。採用効率とミスマッチ低減を両立するソリューションの確立を目指すとしている。
今後の展望
研究開発したアルゴリズムは、実証実験を経てサービス実装へ展開予定。将来的には、決定後の定着率・活躍度・エンゲージメントといった、紹介後の「キャリアオーナーシップ」までをカバーする高度な最適化の他、ソリューション適用範囲の他職種・他地域へのスケールアウトも目指していくと述べた。
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