優れたビジョンは未来の姿を表す
事業体の将来の姿を表す「ビジョン」
世界や業界を牽引する企業ほど、優れた「ビジョン」と「ミッション」を持っている。だが、この2つはどちらも「企業が大切にしていること」という言葉に還元されてしまい、はっきりと分けることは難しい。そこで、本講演の講師白井氏は、ビジョンを目的地、ミッションをたどり着くための手段と2つを分けて考えた。
企業は社会に提供するプロダクトやサービスで、社会を良い方向に変えていこうとする。その際、最終的に「こういう社会にしたい」という到達点がビジョンになる。例えば、フォードは「自動車を民主化する」、ココ・シャネルは「女性の身体を自由にする」とビジョンを定めている。
どちらにも、当時の社会ではまだ実現されていないが、これから作り上げていきたい社会像がある。つまり、ビジョンは「我々はどんな社会を作る企業であるか」を表している。
優れたビジョンを作るもの
では、どんなビジョンが優れたビジョンであるか。優れたビジョンには3つの要素があると白井氏は語る。
中核となるイデオロギー、大胆な到達点、未来に対する明確なイメージ、この3つが優れたビジョンの構成要素と言われています。
例えば、フォードの「自動車の民主化をする」というビジョンも、自動車が大企業か大富豪しか所有できない時代に掲げられたものだ。一般に広く自動車が普及することは想像もできない時代に、それを明確に言い表している。
また、ビジョンを形作るものとして、「価値観(Values)」がある。価値観とビジョンは、部分と全体の関係にあって、「ビジョンを実現するために、事業体の内部で共有される信念や姿勢」と白井氏は説明した。
例えば、Googleは「世界中の情報へのアクセスをワンクリックで提供する」というビジョンを掲げている。それを実現するための姿勢や信念として「10の真実」がある。「ユーザーに焦点を絞れば、ほかのものみな後からついてくる」や「1つのことをとことん極めてやるのが1番」などだ。このそれぞれを白井氏は、価値観(Values)と定義する。
価値観は、一般的には「信頼」「説明責任」「イノベーション」などの言葉が使われることが多く、名刺の裏などでもよく目にする。会社の理念としてのビジョンと、実際に働く人たちが共有している信念。ビジョンだけでなく価値観も共有されているのが、ビジョンの実現には重要になってくる。
優れたミッションは行動の指針になる
一方、白井氏はミッションを「ビジョンを達成するための手段である」と定義している。また、ビジョンと価値観の関係のように、ミッションも「行動規範(Guiding principle)」によって形作られる。
何をするのか?に答える「ミッション」
ミッションは「ビジョンを達成するための手段」だ。ビジョンは将来像や理念などの、「私たちが信じている」ことを表しているが、ミッションは行動について言及する。例えば、ディズニーランドでは「すべてのゲストに幸せを与える」、またレゴブロックでは「子供たちにひらめきを与えて育む」というミッションを定めている。
将来のある地点というよりは、ある地点に到達するために現在進行形で行っているもの、それがミッションです。
ミッションが事業を変える
ミッションは現在の行動を正しい方向へと導く。では、自分たちの事業をどのようにミッションに落とし込んでいけばいいか。
プロダクトやサービスではなく顧客に提供する価値で考えます。ここでいう価値は、さっきの価値観ではなくて、カスタマーバリューです。
例えば、タニタさん。従前は体重計を中心とする秤(はかり)を販売するメーカーでしたが、ある日、私たちは体重計を売っているのではなくて、“健康をはかる”ためのサービスやプロダクトを提供していると気付いたと、ある記事で発言されていました。現在では、さらに“健康をつくる”ための事業に発展しています。
事業を始める時、顧客に提供するプロダクトやサービスがなくてはならない。だが、プロダクトやサービスという「もの」は、それを通して顧客に体験や経験という「こと」を提供する。この「こと」がミッションを作る足がかりになる。
さらに、優れたミッションには3つの要素がある。
1つ目が変化の約束。消費者に対して会社が変わると同時に消費者の生活を良い方に変えていくという約束。
2つ目は、感動的なストーリー。人の感情に訴えかけるようなストーリー。
3つ目は、消費者と密接に関わる。
自分たちが顧客に提供している「こと」、そしてビジョンという方向性、それらを見定めてミッションが定義された時、日々の選択の助けとなり、「今、しなければならないこと」の答えを手にすることができる。
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