人が採れないことを前提とした計画立案を
これらの課題を乗り越えて攻めのDXを成功させるためには、内製実行力を高めるための本質的なアプローチが不可欠だ。池照氏はポイントを三つに絞って解説する。

1.実行可能な計画を立てる
池照氏曰く、計画段階から現実を見据えることが不可欠である。「今期末までに30人を採用する」など、実現可能性の低い計画がDXプロジェクトの不具合の原因だと指摘。人材不足を前提として、外部リソースの活用を含めた柔軟なプランニングを初期段階で行う必要があると語った。
「不足した人材を海外で確保することや、メンバーズさんのようなパートナーに求めることを前提に、全体の戦略を描く必要があります」(池照氏)
2.リーダーがオーナーシップを持つ
「DX推進のリーダーは、プロジェクトの全行程においてオーナーシップを持ち続けるべき」と池照氏。誰かに任せきりにする丸投げ文化から脱却し、自らが責任者として最後まで関与する姿勢が、チームの推進力を高めるという。
3.仲間意識でチームを一体化させる
内部人材と外部パートナーの間に存在する壁を打ち破ることが、成功の鍵を握る。外部人材を単なる「外注さん」として扱うのではなく、戦略をともに考え、協働する「仲間」として受け入れることが重要との考えだ。これにより、知識やノウハウが社内に蓄積され、真の内製化につながるという。
「受発注関係は当然存在しますが、その壁を超えた仲間意識や連帯感、チームアップをリーダーが強く意識して、常にチェックをしながらプロジェクトを進めていくことが大事です」(池照氏)
何もかも中にあれば良いわけではない
池照氏は内製化の重要性を認めた上で「何もかも中にあれば良いという問題ではない」と強調する。
伝統的な日本企業では、新卒から一歩ずつキャリアを積み重ねていく文化が根付いている。これは従業員の事業ドメインに対する深い知識を育む一方で、自社内のガラパゴス化を招くリスクもともなう。つまり、DXを成功させるためには既存のやり方を見つめ直し、外部からの新しい知見をうまく取り入れる必要があるのだ。
最後に池照氏は、DXを推進するリーダーに向けて次のようなメッセージを送り、セッションを締めくくった。
「まず、計画段階から実行可能なプランを立てましょう。人が採れないことを前提にして、その上で何をすべきか。実行に移る前に考えていただくと良いと思います。そして何よりも重要なのは、オーナーシップを持ち続けることと、外部人材を含めたメンバーとの連帯感です。この二つが損なわれていないかを常に省みながら、プロジェクトを進めてみてください」(池照氏)