AI時代の組織に求められる「判断をデザインする力」
制作実務をAIが加速させる一方で、「何を選び、どの方向に舵を切るか」は人が担う領域として残ります。
AI時代の組織においては、職務ごとにバラついていた判断基準を、組織全体、そしてAIとも共有可能な形へ「翻訳」することが不可欠になります。
- デザイナー:ブランドの哲学を、AIが理解できるルールやプロンプトへ翻訳する
- マーケター:AIの提案を、文脈と目的に照らして評価する
- エンジニア:判断の結果を、具体的な体験として実装する仕組みを整える
- マネジメント:組織全体が進むべき判断の「北極星」を示す
これらの役割がつながり、AIを共通言語とした越境型の協働が生まれた時、組織のスピードと一貫性は飛躍的に高まります。 データの根拠、デザインの感性、そして人の創造性が一つの流れとなるよう、意思決定のプロセスそのものをデザインする。それが、継続的に価値を生み出す組織の条件なのです。
「思考のレンズ」で判断の基盤をそろえる
では、具体的にどうすれば判断の前提をそろえられるのでしょうか。有効な手法として「思考のレンズ(Decision Lens)」を提案したいと思います。
レンズとは、「どの視点から物事を見るか」「何を基準に良し悪しを判断するか」を明示し、共有するためのフレームワークです。これは、デザイナーが不確実な状況下で視点を行き来しながら正解を導き出す思考法にヒントを得ています。
重要なのは、このレンズが単なるスローガンではなく、LLM(大規模言語モデル)の前段で機能する「前処理システム」としても働く点です。AIは人のように文脈を察することはできません。だからこそ、判断の方針や価値観を明文化(レンズ化)し、入力として与えることで、AIの出力に組織の文脈と判断軸を反映させることができるのです。

レンズは、「経営」と「実践」の2層で構成すると、全社の判断整合性を担保しながら、個別の業務判断にも対応でき、構造としても分かりやすくなります。
経営レンズ:「何」を基準に判断するか
組織全体の方向性をそろえる「北極星」です。意思決定の優先順位や投資の軸を定義します。
- 存在意義:組織が何を目指すのか
- 原則:判断において譲れない価値観やルール
- 優先軸:トレードオフが発生した際、何を最優先するか
実践レンズ:「どう」表現するか
経営レンズの方針を、日々の企画・制作・運用へ落とし込むための具体的なガイドラインです。
- 文脈:現在の状況・課題・環境の定義
- 方針:何を伝えたいか/何を変えたいか
- 語り口:誰に、どんなトーン&マナーで伝えるか
- 制約:守るべき基準(ブランド・倫理・法規など)
- 指標:何をもって成果とし、どう評価するか
経営レンズが“理念”を定め、実践レンズが“行動”を整える。これにより、人とAIが同じ意図に基づいて判断・行動できる「共通基盤」が完成します。

