財務・経営の最前線を渡り歩いた28年の軌跡
小宮昌人氏(以下、小宮):本日は波多野さんのこれまでのご経歴と、現在のソニーベンチャーズの組織体制、そして投資戦略を伺えればと思います。まずは自己紹介からお願いします。
波多野和人氏(以下、波多野):私は1997年にソニーの財務部に入社しました。財務部ではM&Aやグループ会社のサポート、為替・資金のディーラー業務など、まさに「ファイナンスの最前線」でキャリアをスタートさせました。大きな転機となったのは2002年、当時のバークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック)のサンフランシスコ拠点へ運用実務の研修に行ったことです。その後、ロンドンのソニーグローバルトレジャリーサービシーズでマネージングディレクターを務めるなど、グローバルな資金運用の経験を積みました。
1997年ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)入社。財務部にてM&Aや資金運用を経験後、サンフランシスコのバークレイズ・グローバル・インベスターズでの研修やロンドン駐在を歴任。ソニーモバイルコミュニケーションズやソニーネットワークコミュニケーションズでの経営企画・ビジネスインキュベーションを経て現職。中長期的な経営戦略策定、戦略的パートナーシップ、投資マネジメントの専門性を有する。東京理科大学大学院 工学研究科 経営工学専攻 修士課程修了。
小宮:財務のプロフェッショナルとして歩まれた後、事業側へも深く関わっていますね。
波多野:はい。帰国後はソニーモバイルコミュニケーションズやソニーネットワークコミュニケーションズで経営企画やビジネスインキュベーションを担当しました。2024年1月にソニーベンチャーズの代表取締役社長に就任し、現在はソニーグループの「インベストメントマネジメント部門」および「先端インフラ事業探索部門」の部門長なども兼務しており、スタートアップ投資から戦略的スピンアウト支援、さらにはWeb3やローカル5Gといった先端インフラ事業の探索まで、広範な領域を管轄しています。
「ソニーイノベーションファンド」が描くグローバル投資戦略
小宮:投資母体である「ソニーイノベーションファンド(SIF)」の成り立ちと現在の規模を教えてください。
波多野:SIFは2016年、当時の十時(現・ソニーグループ 代表執行役 社長 CEO 十時裕樹氏)や御供(現・ソニーグループ 代表執行役 CSO 御供俊元氏)らが中心となり、本社と一体となった投資体制として発足しました。当初はソニー本体のバランスシートから投資する「SIF1」から始まりましたが、現在は外部投資家(LP)から資金を募る「GP/LP構造[1]」のファンドを主軸としています。現在の総運用資産残高(AUM)は650億円を超えています。
小宮:世界各地に拠点を持たれていますが、どのような体制で運営されているのでしょうか。
波多野:私たちは「SIFメンバーが現地にいないと投資しない」というこだわりを持っています。現在は東京、ベイエリア、ロサンゼルス、ロンドン、テルアビブ、ムンバイ、バンガロール、ナイロビに人材を配置し、現地の起業家と直接向き合っています。特徴的なのは、地域間の壁を取り払った「グローバルワンチーム」の体制です。主要拠点間で人材を積極的にローテーションさせ、投資哲学を共有することで、地域ごとに分断されないシームレスな投資活動を実現しています。
[1]GP/LP構造:GP(ゼネラル・パートナー)が無限責任を負い運用を行い、LP(リミテッド・パートナー)が有限責任で出資する形態。
