イノベーション拠点「NOVARE」設立の背景
1804年に越中富山の大工であった初代清水喜助が神田で開業し、220年以上の歴史を持つ清水建設。1887年には渋沢栄一を相談役に迎え、その教えである「論語と算盤」を社是としている。全国47都道府県すべてに支店や営業所を置き、顧客の近くで仕事をするのが特徴だ。
そんな同社が2019年に発表したのが、長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」である。「スマートイノベーションカンパニー」を標榜し、建設事業の枠を超えた自己変革と挑戦、多様なパートナーとの共創を宣言した。その背景には、強い危機感があったと中村氏は語る。
「2018年における当社の利益構成は、建設事業が90%を占め、さらに国内事業が95%を占めていました。つまり、国内の建設事業の“一本足”という状況だったのです。そこで、非建設事業にも取り組み、海外の割合を増やしていくことを目指しました」
こうした事業構造、技術、人財のイノベーションを達成し、ビジョンを実現するための組織・場所として整備されたのが「NOVARE」だ。ラテン語で「創作する」「新しくする」を意味し、Innovateの語源でもあるこの言葉には、清水建設のこれまでの殻を破り、新しいことに挑戦するという決意が込められている。
「NOVARE」のオープンイノベーション「DDRS」とは
東京駅からJR京葉線で3駅の潮見駅前に広がるNOVAREは、複数の施設で構成されている。技術者を育成する「NOVARE Academy」、220年の歴史資料を公開する「NOVARE Archives」、技術研究所から一部機能を移管した「NOVARE Lab」、そして中村氏が勤務し、社外とのオープンイノベーションの場となる本館「NOVARE Hub」だ。さらに敷地の中央には、唯一現存する2代目清水喜助が建設した「旧渋沢邸」が移築され、歴史と未来が交差する象徴となっている。
NOVARE Hubでのオープンイノベーションは、独自の4つのステップで推進されている。
「課題の発見(Discover)、課題を解決する仮説立案(Define)、仮説を検証し実践する(Refine)、成果を社会実装していく(Scale)。私たちはこれを『DDRS』と呼んでおり、この流れに沿って様々なイノベーションに取り組みやすい施設設計にしています」
また、NOVARE内には6つの部署が新設された。「新しい組織・施設だからこそ、従来の組織名ではなく横文字で」という当時の社長の号令のもと、プロモーションユニットやベンチャービジネスユニット、そして中村氏の所属するイノベーションセンターなどが組成され、旧来のゼネコンのイメージを覆す体制が敷かれている。
