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高PBR企業はIT投資が違う。EYSCが提唱するROIC経営の実践フレームワーク

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新フレームワーク「EY-ISAO-RX」による課題解決

 続いて登壇した松本氏は、ROIC経営とITマネジメントの現場で実際に生じている課題へと話題を移した。ROICという指標は決して万能ではなく、事業ごとの正確な算出が困難であったり、現場のKPIと乖離して形骸化したりするリスクを孕んでいる。さらにIT側にも、固定化されたIT投資が資本効率を悪化させる問題や、IT部門が経営の戦略的パートナーになりきれていないといった課題が存在する。こうした経営側とIT側の課題が複雑に絡み合うことで、多くの企業が変革の停滞というジレンマに陥っているという。

ROIC経営におけるITマネジメントの課題は、「ROIC経営の課題」と「ITマネジメントの課題」の掛け合わせから生まれてしまっている
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 実際の企業現場を見渡すと、そもそもROIC経営が実践できていないケースや、ITマネジメントがビジネスと完全に乖離しているケース、あるいはその両方に該当する事例が散見される。こうした複合的な課題を打破し、現状を打開するために開発されたのが、独自のフレームワーク「EY-ISAO-RX」だ。このフレームワークは、事業ごとのROICに対してITコストやビジネスのKGI(重要目標達成指標)・KPIを明確に対応づけ、IT投資がいかに企業価値へ貢献しているかを可視化することを目的としている。

 その全体像は、最上位に「事業ポートフォリオコンポーネント」を置き、その下に「KGI/KPI(ROICツリー)コンポーネント」を配置することで、ROICツリーとIT部門の活動指標をシームレスに接続する構造となっている。これにより、ITコストを単なる費用ではなく「資本」として捉え直し、局所的なROIではなく全社的なROICベースでの投資判断が可能となる。また、エンタープライズアーキテクチャ(EA:企業全体のシステム構造)のコンポーネントを通じて、ビジネス戦略と整合した業務プロセスやIT資産の構造化・可視化を支援する仕組みも組み込まれている。

「ROIC経営の課題」と「ITマネジメントの課題」を合わせて解消し、ROIC経営におけるITマネジメントを実現するEY-ISAO-RXフレームワークを提唱
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 松本氏によれば、導入にあたっては最初から高度なツールによる自動化を追求する必要はなく、まずは手作業で簡易なデータを抽出するところから始めても十分だという。将来的にはデータ基盤を整備し、財務部門と連携した精緻な投資管理を目指すものの、初期段階で最も重要なのは「ビジネス部門とIT部門の対話を構造化すること」である。同時に、最低限のITガバナンスが構築されていなければこのフレームワークは機能しないため、まずはガバナンスやマネジメントの定義から着手することも成功の要諦であると説いた。

全社で取り組むべき「意識改革」

 会の終盤では、これからのIT部門に求められる抜本的な役割変革へと議論が深まった。松本氏は、現在の日本のIT部門の多くが外部ベンダーのマネジメント業務に忙殺され、社内に技術的な専門性を持つ人材が不足している現状に警鐘を鳴らす。新たなフレームワークを真に機能させるためには、業務部門と対等な目線でアラインメントを図れるマネジメント層と、最新テクノロジーのPoC(概念実証)を自らリードできる技術者集団を企業内部に確保し、組織モデルそのものを転換していくことが急務であると訴えた。

 さらに、データ漏洩などの企業不祥事が相次ぐ昨今の状況を踏まえ、短期的な利益追求に偏らない、企業の持続可能性を守るための投資管理のあり方についても重要な提起がなされた。サイバーセキュリティをはじめとする中長期的なリスク対応は、事業の土台を強固にする不可欠な要素である。経営陣にこうした投資の意義を正しく理解してもらうためには、IT部門自身が客観的なデータに基づき、経営視点でその必要性を論理的に説明できる能力を持つことが大前提となる。

 岩泉氏も再び口を開き、多くの企業が経営改革を志向しながらも、経営側の意図とIT側の実行計画が分断されていたがゆえに期待された成果を得られなかった、という過去の反省点に触れた。本来不可分であるビジネス戦略とIT戦略を融合させるための具体的な道標として、今回の支援サービスが機能することに強い期待を寄せる。そして、「事業価値の向上や資本効率の改革を本気で目指すのであれば、ITマネジメントは経営者が直接管理すべき最重要アジェンダである」という認識が、会場全体で改めて共有された。

 松本氏は、今回のサービス提供が単なるIT部門向けの管理手法の提示に留まらず、CEOや経営企画、CFOが主導して取り組むべき「全社的な意識改革のメッセージ」でもあると締めくくった。ROICを起点にIT投資のあり方を再設計することで、企業価値の向上と社会的価値の創出を同時に実現できる環境づくりを、今後も強力に推進していく方針だ。

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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