勝負は「技術」から「認証・ルール形成」へ。
技術的なブレイクスルーが進む一方で、社会実装に向けた「認証・ルール形成」の勝負も激しさを増している。テスラは既に113億キロもの走行データを蓄積し、圧倒的な賢さを持つAIを育て上げている。しかし、End to End AIには「なぜその判断をしたのか(例:右に避けたのか)」という思考プロセスがブラックボックス化する弱点がある。事故が起きた際の説明責任が問われるため、公道での認証取得における大きな障壁となっているのだ。
ここで主導権を握ろうとしているのが欧州勢である。メルセデス・ベンツはNVIDIAと提携し、5年という歳月と約1,000人のエンジニアを投じて、認証基準をクリアできるAIを開発した。具体的には、End to End AIによる判断の下に、従来のルールベースを用いた安全・評価基準の「ガードレール(お目付け役)」をバックアップとして機能させている。
これにより、万が一AIが誤作動を起こしても危険を回避でき、「説明可能性」を担保できるというわけだ。「2027年頃には認証プロセスが固まり、2030年以降には自動運転車が一般に市販される時代が来る」と、近藤氏は今後の確実なロードマップを提示した。
中国製AIの躍進と浮上する「AI主権」の脅威
前半セッションの最後に近藤氏が投げかけたのは、「AI主権」というテーマだ。
国内でも自動運転の実証実験が進んでおり、特に岐阜市では5年間という長期にわたる自動運転バスの運行プロジェクトが始まっている。注目すべきは、ここで採用されているのが中国・WeRideの自動運転システムであるという事実だ。同社のAIは、路上駐車を自律的に避けるなど、旧来のルールベースでは対応しきれなかった複雑な状況を見事にクリアし、日本の公道をスムーズに走行している。
しかし、これは同時に「海外製のAIが日本の詳細な地理情報や人流データを日々収集し、学習している」ことを意味する。「もし他国のAIがおかしくなり、日本人の命に関わる事故が起きたとき、我々はどこまで監査や検証ができるのか」と近藤氏は問いかける。
自動運転というインフラを社会実装していく上で、利便性の追求だけでなく、「我々の命とデータをどこの国のAIに預けるのか」という地政学的な視点での議論が急務となっている。海外の技術が浸透する中、自治体や日本企業がどう向き合っていくのか、看過できない課題が浮き彫りとなった。
