グローバルな市場経済、ローカルな民主主義がもたらす“世界のソマリア化”
市場経済はグローバルな性格を持ち、民主主義はローカルな性格を持つ。そして、20世紀では、経済の中心となる都市が移動するたびに、財産を保証する権利や、警察や裁判機構、市民からの要請などといった形で、その地に民主主義を根付かせてきた。今後ますます広がっていく市場経済は、それが中東であれアフリカであれ、民主主義を世界に広めていくだろうとアタリ氏も予見している。
しかし、市場経済が国家を衰退させていく中で、法統治を伴わない形で世界中に市場経済が浸透していく、それが21世紀の危機だ。
世界の真の意味での危機は世界のグローバル化ではありません。世界のソマリア化であると私は思っています。マフィア、麻薬の密輸や環境破壊が増える、貧富の格差が広がっていく、これは機会均衡や社会福祉などの努力をする国家機能や組織がないからであります。
民主主義を欠いた市場経済は、談合の横行、遊休生産設備の発生、金融投機行為の助長、失業率の上昇、天然資源の無駄遣い、違法経済行為の横行、反社会勢力の拡大などを促す。このような世界にマフィアやテロ組織がのさばっていくことになるが、それを取り締まる国家は市場経済が弱体化させてしまっている。
グローバルな市場があれば、グローバルな法の支配もあるべきです。グローバルな資産保護や、グローバルな裁判所や市場機能を統治する機関が不足しています。今我々が感じている危機というのはそこに根源があります。グローバルマーケットの時代にグローバルな法の支配がないということが危機そのものです。
市場経済の繁栄、国家の衰弱、ソマリア化の進行、これらの要素が描き出す“21世紀という歴史”は憂うつな表情をしている。だが、そこにも希望はある。それはやはり、グローバルなレベルでの民主主義の台頭だ。