「収益モデル」は“何の権利を販売するのか”
収益モデルとは、価値提案の対価として金銭を獲得する方法を表すものです。新しいビジネスモデルを考える際、何のオファーに対して誰に対価を請求するかをデザインすることは非常に重要ですよね。たとえば、アドビ社はPDFファイルを見るだけの人には無料でソフトウェアを提供し、それを作成する顧客にのみ使用料を請求しています。これらは、価値提案とターゲット顧客で定義されているはずです。
収益モデルの重要な属性として、「何の権利を販売しているのか?」を最初に定義することにします(図表4)。これには、所有権の移転(多くのメーカーや小売業)、利用権の供与(レンタルやライセンス販売、ホテルや旅客業など)、役務の提供(例.床屋や人材派遣をはじめとする多くのサービス業)、取引の仲介(不動産や株式ブローカーなど)、広告の5つのタイプに分類することにします。
ここで、MITスローンスクール(マサチューセッツ工科大学ビジネススクール)によるビジネスの構造的な分類をご紹介しましょう。MITでは、ビジネスモデルを「販売される権利は何か?」、「必要とする資産は何か?」という2つの軸によって整理しています(図表5)。
縦軸は、販売される権利によって4種類の事業者タイプを示しています。創作者は、資産の所有権を販売者に販売する一方、販売者はさらなる買い手に再販売します。地主は資産の所有権ではなく利用権を買い手に販売します。仲介者は資産の所有権を持たず、売り手と買い手を仲介することにより手数料やコミッションを獲得します。
横軸は、販売される資産(または経営資源)の4つのタイプを示しています。この4×4の組合せにより、16種類のビジネス形態が示されています。ビジネス目的での人間の製造と販売は多くの国で禁止されていますので、正確にいえば14種類です。もちろん、複数のタイプを兼ね合わせた企業も存在することになります(IBMは、創作者であると同時に販売者や地主でもあります)。