ブック Biz/Zineブックレビュー

テクニウムの自己増殖がもたらす未来(ケヴィン・ケリー『テクニウム』)

[公開日]

[著] 弦音 なるよ

[タグ] 事業開発 テクノロジー オープンサイエンス オープンイノベーション

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

テクニウムの進化が起こる場所(本書より)

 本書は生命とテクニウムとを「自己生成可能な情報システム」の観点から連続して論じる。この一連の進化には、生命の時代から一貫した傾向もあれば、近年のテクニウムに顕著な変化もある。テクニウムが向かう先を見る前に、まずはその進化の特徴をまとめてみたい。特に、本書のムーアの法則に関する分析は面白い。

エクストロピーの増大と非物質化・脱身体化(本書第4章より)

 生命は進化の各段階で無秩序性を少なくしている。この傾向に本書は、エントロピーの反対の「エクストロピー(Extropy)」という言葉を付ける。エクストロピー増大はテクノロジーでも同様の傾向で、「もっとも複雑なテクノロジーが、最も材料を使わず最軽量だ」。この最たるものにソフトウェアがある。

エクストロピーを長期的に見ると、物質世界から超越的な非物質世界への脱出と考えることができる。 「価値の脱身体化」(物なしの価値)というのはテクニウムにおける定常的な傾向だ。

非物質化がエクストロピーを進める唯一の方法ではない。テクニウムが情報を圧縮して高度に洗練された構造にすることもまた、非物質化の勝利だ。例えば、(ニュートン以来の)科学は、物質の運動についての膨大な量の証拠を抽象化して F=ma のような非常に単純な法則で表してきた。

自己増殖と「進化の進化」(本書第13章等より)

 進化で普遍的となるもう1つの要素に「自己増幅」がある。これも本書のいくつかの言葉を引用したい。

テクニウムの膨大な力の源は、その規模だけでなく、自己増幅する性質にもある。

もっと重要なことは、知識が構造化されている方法自身が進化し、再構築されているということだ。 進化は進化したがっている。(中略)

自分が姿を変える領域自体を変えてしまう、変幻自在の存在を想像してみればいい。(中略)
生命はより多くの適応方法を獲得してきたが、それが本当に変えてきたのは自分の進化性、つまり変化を創造する傾向と機敏さだ。

 進化とは自己増幅であり、さらに重要なのは、増幅する領域自体が変化していく点だ。テクニウムの進化も、ある特定の領域で極端に進む可能性がある。そのヒントとなるのが「ムーアの法則」だ。

バックナンバー