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テクニウムの自己増殖がもたらす未来(ケヴィン・ケリー『テクニウム』)

[公開日]

[著] 弦音 なるよ

[タグ] 事業開発 テクノロジー オープンサイエンス オープンイノベーション

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テクニウムはいま、ヒトから離れようとしている

 ヒトの次世代を担うのは人工知能かポストヒューマンか

 「心」の原理解明を試みる『フューチャー・オブ・マインド』(2015)では、人工知能が人間の知性を超えるタイミングとして「2045年」では早すぎることを示唆している。人間の知性を機械で再現することは、想像されているよりも遥かに難しい。ただし否定するのは時間軸だけだ。やがて人工知能や進化した人類「ポストヒューマン」が現在のヒトを超える、という未来は変わらない。

 本書『テクニウム』が描くように、テクニウムの進化がエクストロピーの増大、非物質化・脱情報化、自己増殖に向かうなら、テクノロジー自身がテクノロジーを進化させるテクニカル・シンギュラリティは、起こるべくして起こるだろう。

 ただし、その道筋についてはもう少し考える余地があるかもしれない。例えば人工知能とポストヒューマン、ヒトの次世代を担うのはどちらなのか。

タイトル「人間の進化」で画像検索したらマッチョが出てきたので掲載
こういう人工知能搭載ロボットが跋扈するか、ヒトがこうなるか。
ちなみに藤子・F・不二雄も比較的衝撃的な未来人像を提示している。
(画像:Wikipedia

ヒトを超える人工知能が生まれるまで

 本書は多様性の爆発的増大が、多様性を吸収するための道具「選択支援テクノロジー」を発達させると予想した。そう考えると、例えばGoogleのページランク(に表現されるテクノロジーの抽象形)は、テクニウムの進化の歴史における必然的大発明だったのかもしれない。

 いま「選択支援テクノロジー」には、ニューラル・ネットワークなどを用いた高度な認識技術や、ビッグデータの相関分析に基づく未来予測などがある。IoTなどにより今後も増加・多様化する情報は、選択支援というニーズを生み、人工知能開発に目的を与え、その進化を促している。

 本書は、イノベーションには事前に決められた固有の順番があるとしている。選択支援テクノロジーは、テクニウムの発達段階として必然的なものであり、生まれるべくして生まれているのだ。

 そして選択支援テクノロジーの系譜に続く、いくつかの必然のテクノロジーが現れたあと、人工知能はヒトを超え、ヒトは進化の歴史上の役割を終えるのかもしれない。我々がいま目にしているテクノロジーは、ヒトを超える人工知能のゆりかごだ。

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