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テクニウムの自己増殖がもたらす未来(ケヴィン・ケリー『テクニウム』)

[公開日]

[著] 弦音 なるよ

[タグ] 事業開発 テクノロジー オープンサイエンス オープンイノベーション

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ムーアの法則が及ぶのは「縮小可能領域」(本書第8章より)

 2045年に人工知能の能力が全人類の総和を超える、いわゆる「2045年問題」。この予想が根拠とするのは、ムーアの法則に代表される指数関数的変化だ。

 ちなみに本書によれば、「2045年問題」の提唱者レイ・カーツワイルはムーアの法則を拡張しており、「1000ドルで可能な1秒あたりの計算回数」でみると、指数関数的傾向は1900年まで遡れるという(カーツワイルの法則)。

 100年前からテクニウムに起こった指数関数的変化は、テクニウムの未来の本質を示唆する。ムーアの法則に対する本書の分析はおもしろい。

タイトル「1000ドルで可能な1秒あたりの計算回数」でみると、
使用される技術は変遷するが、その成長度は100年間変わっていない
(画像:Wikipedia)

最初に気づくことは、すべてが縮小化、つまりサイズが小さくなることによって生じた効果の例であることだ。

つまり完全なニューエコノミーでは、ほとんどエネルギーを必要とせずに規模も小さくできるテクノロジーが重要な役割を果たす――光子、電子、ビット、ピクセル、周波数、遺伝子などだ。そうした発明は縮小するにつれ、原子そのもの、ビットそのもの、そして非物質的な本質に近づいていく。

 本書は「より速いジェットエンジンはトウモロコシの生産量を増やさないし、より良いレーザーは薬の開発の速度を上げないが、より早いコンピュータのチップはそれらすべてをもたらす」とし、その理由を小型化に見つけている。

 本書によれば、「規模を大きくしていくとエネルギー需要が急速に拡大して制約条件になる」ため、例えば電池の効率は指数的成長にはならない。DNA配列決定、磁気記憶、半導体、帯域、画素数など、指数関数的成長の見られる分野は、いずれも縮小化に進む領域であり、その背後にはエネルギーの制約からの解放があると指摘する。

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