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テクニウムの自己増殖がもたらす未来(ケヴィン・ケリー『テクニウム』)

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 米国『WIRED』誌の創刊編集長であり、テクノロジー界の思想をけん引するケヴィン・ケリー氏。NHK出版より、7月27日に刊行される著書『<インターネットの次に来るもの 未来を決める12の法則』の刊行にあわせて、来日講演が開催される。  本コラムは、氏の前著『テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?』(みずす書房)が、難解かつ高額なために、読むことを挫折してしまった方のために、サマリーを3回に分けてお届けする。第3回の今回は、「テクニウムの自己増殖がもたらす未来」と題した内容をお届けする。  本コラムの筆者のブログ、「希望は天上にあり」から、筆者の許諾のもとに転載させていただいた。

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 テクノロジーとはいったい何か。『テクニウム』(2014)はこの疑問への答えを探るなかで、いくつかの仮説を述べている。

  • 生命を「自己生成可能な情報システム」としてみると、ヒトの次の進化形は「テクニウム」となる
  • イノベーションやテクニウムには事前に決められた固有の順番があり、必要な条件が全て揃ったとき新しいテクノロジーが生じる

 テクニウムとは、テクノロジーが大規模で相互に結ばれたシステムを指す。霊長類まで続いた生命の進化の続きにはテクニウムがあり、時計を太古の地球に巻き戻してやり直しても、再びヒトやインターネットがあらわれるという。この仮説について次の記事で紹介した。

 本書の仮説が正しいとしてやっぱり気になるのは、進化したテクニウムが今後どこへ向かうのかだ。進化に固有の方向があり、それが必然であるならば、今後向かう先も予想できるはず。テクニウムはどんな未来を引き起こすのか。

 本書はテクニウムが、エクストロピーの増大と非物質化、自己増幅の方向に向かっていると述べている。この予想から想起されるのはテクニカル・シンギュラリティだ。テクノロジーの進歩の担い手が人間から人工知能やポストヒューマンに変わる、という予想で、有名なところではレイ・カーツワイルの「2045年問題」がある。

 私は「2045年問題」には異論があるが、本書『テクニウム』の理論に基づくと、テクニカル・シンギュラリティが起こるべくして起こるように思えてならない。本書の予想を紹介しながら、この問題について考えてみる。

Summary Note

テクニウムの進化が起こる場所(本書より)

  • 生命とテクニウムの進化は、エクストロピーの増大と非物質化に向かう
  • テクニウムは自己増幅し、進化する領域自体を変えていく
  • ムーアの法則は、エネルギーの制約を受けない縮小化可能領域に働く

テクニウムの進化がもたらす近未来(本書より)

  • 多様性の爆発的増加が「選択支援テクノロジー」を発達させる
  • テクニウムの相互性発達がオープン化を促す
  • テクノロジーの偏在化がパラダイムシフトをもたらす
  • UNIXカーネルはテクノロジーの世界のゴキブリとなる
  • テクノロジーの自己増殖が止められなくなる
  • テクニウムがヒトから独立する

ヒトの次世代を担うのは人工知能か、ポストヒューマンか

  • 選択支援テクノロジーは確かにヒトを超える人工知能を生もうとしている
  • その一方でヒト自身による自己増殖も始まろうとしている

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テクニウムの進化が起こる場所(本書より)

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弦音 なるよ(ツルネ ナルヨ)

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