バイアスを見つけるための「視覚化」と「構造化」
バイアスは業界や専門分野の「あたりまえ」を共有していくことで「効率化を助ける一方、変革を妨げる」二面性があると濱口氏は言う。
何かを改善しようと思ったら、バイアスを使えばいいんです。ただ、まったく新しいものを作りたい、ゲームチェンジャーになりたいときには、バイアスは邪魔になってきます。なぜかというと、バイアスに沿って他の人と同じ考え方をしてしまうからです。これをいかに外すかが問題です。
バイアスを壊す商品で成功した事例として、濱口氏はUSBフラッシュメモリーの開発経緯を紹介した。
1999年、CFカードを製造していたM-systemsは、サンディスクの攻勢を受け、新たな記憶媒体を開発しようと、濱口氏が所属するZiba Designに協力を求めた。デザイナーやエスノグラフィックリサーチャー、エンジニアらがブレストに参加し、アイデアを出しあった。が、多くのアイデアが出されても「アイデアそのものには着目しないほうがいい」と濱口氏は言う。
着目すべきは、なぜ、そのアイデア群ができたのか。なぜ、そういうアイデアが出てきたのか、背後にある思考エンジンをトラッキングする。つまりバイアスを探る。それを視覚化することに時間をかけたほうがいい。
この事例では多くの視覚化、構造化が試みられたが、以下の図は特に効果的だったという。
デジタルカメラの解像度の上昇に伴いデータサイズも膨大になっていた当時、有形の記憶媒体は陳腐化し、データは通信でやりとりするようになるとの考えがトレンドだったため、出されたアイデアはすべて図の白線上にのっていた。
この白線がバイアスだとすると、青線の先の*に何かあるのではないか、と考えるのがバイアスブレイキングだ。この*印にくるアイデアは、たとえ「データサイズが大きくなっても『今日のプレゼンはここに入っているよ』と言ってデータを手渡しできる体験」ということになる。
これ、見えていますよね。構造化されていますよね。僕もこの白い矢印に引っ張られているから、頭の中ではそんなのいらないと思っている。でも図面上に普通は考えないものが見つけられた場合は、それについて1日かけて無理矢理、考えることをオススメします。それでアイデアが出てきたら、ものすごくいい投資になります。アイデアそのものは見てもしょうがないです。アイデアはその背後エンジンを探るためのガソリンです。
▼ Biz/Zine(ビズジン)の記事更新情報はこちら▼
*気になるセミナーレポートや連載記事の更新情報に関しては、下記Facebookページに「いいね!」をお願い致します。また、下記Twitterの「フォロー」をお願い致します。これによって、Facebook上でBiz/Zine(ビズジン)の記事更新情報などが配信され、Twitterのツイートが配信されるようになります。
●Facebookページ:https://www.facebook.com/bizzine
●Twitter:https://twitter.com/SE_bizzine