ヨーロッパで磨かれたビジネスモデル創出の方法論
イノベーションと言えば、米国シリコンバレーが浮かぶ。Google、Apple、Facebook、AirBnBやUberといった企業の成長の要因は、卓抜したテクノロジーとビジネスモデルによるものという理解も浸透してきた。一方で米国以外の、欧州の企業によるイノベーションへの取組みも盛んになってきた。とくに「インダストリー4.0」といった国家的プロジェクトを掲げるドイツの製造業の他、製薬・金融企業などだ。ベンチャーが主体のシリコンバレーと異なり、長い歴史を持つ伝統的な企業や大企業からの取り組みも多い。ベンチャーが生み出したビジネスモデルの革新手法は、大企業にも適用できるという考え方を提唱するのが、スイスBMI社だ。
BMI社はスイスのザンクトガレン大学で生まれたビジネスモデルイノベーション手法の企業への導入を推進している。今回のホフマン氏の来日は。日本のマキシマイズ社の渡邊氏の招聘に寄るもの。マキシマイズは、BMI社の研修の日本での代理店として契約している。渡邊氏は、この手法を紹介した『ビジネスモデル・ナビゲーター』の翻訳者であり、過去にはスティーブン・ブランクの『アントレプレナーの教科書』などの共訳もおこなったイノベーション理論の紹介者だ。
このBMI社のビジネスモデル・イノベーション手法のコアにあるのは、ザンクトガレン大学のオリヴァーガスマン教授の研究成果である、「世界のビジネスモデルの90%が既知のパターンの組み合わせである」というもの。BMI社は、このガスマン教授の研究からイノベーションのメソッドを体系化し、ワークショップ、研修などを通じて企業変革プログラムを提供している。
ビジネスモデルのイノベーションを再定義する
ホフマン氏は初めにBMI社の定義するビジネスモデルについて説明した。ビジネスモデルは「Who?」「What?」「How?」「Why?」の4軸で定義される。この4つの軸から「対象顧客」「提供価値」「収益モデル」「提供手段」が構成される。その関係を包括的に表したものが、下記の「マジック・トライアングル」だ。
「ビジネスモデルのイノベーション」とはこの4軸のうち、2つ以上が変わったことを意味します。たとえば製品が変わった、プロセスが変わっただけでは、ビジネスモデルのイノベーションとは言えません。
日本ではイノベーションは長らく「技術革新」とみなされてきた。イノベーションに関する議論が深まってきた最近では、「製品のイノベーション」「プロセスのイノベーション」のどちらかの意味で語られることが多い。またビジネスモデルを収益モデルの意味で使うケースがほとんどだといえるだろう。ホフマン氏は、ビジネスモデル・イノベーションは、製品イノベーションとプロセスイノベーションを包みはするが、さらに上位に位置づけれられるものだという。