ちょっと落ち着いてAIについて考えてみる
『シンギュラリティは怖くない』(草思社)という本を上梓した中西さん。「落ち着いてAIについて考えてみれば、機械と人間の関係を心配することはない」という。
「この本では、人工知能についてちょっと落ち着いて考えれば、人間を困らせる人工知能は存在できないのだから怖がる必要はない。人間も人工知能に手助けをしてもらうことで、余暇を手に入れたり、知見を得たりすることが出来るので、希望が持てる」ということを提唱しているんです。」(中西氏)
一見、楽観的にも思えるタイトルの本だが、この本に書かれた内容は深い。2045年のシンギュラリティを待つまでもなく、今すでにAIの能力は人間に追いついていて、われわれはその飛躍的進化に気づいていないという意見も込められている。
今、そこにあるシンギュラリティ
「シンギュラリティはもう起きているとも言えます。AIを汎用型と特化型に分けた場合、特化型の面ではすでに人間を追い越している。そのことにわれわれはあまり驚いていないという現実があります。」(中西氏)
AIをめぐっては、「強いAI」「弱いAI」という議論が昔からある。あくまで人間の脳を代替できる汎用的なAIをめざすという考え方も根強い。しかしながら、実際は、現在ほとんどの研究者が特化型人工知能を研究しているとみていい。
特に、米国などで追求されているのは、Googleの囲碁のAI「アルファGo」などの特化型のAIだ。そしてこの分野では、シンギュラリティを待つまでもなく機械は人間の能力を凌駕しているというのが中西さんの主張だ。
「われわれはもうすでにシンギュラリティに直面していて、そのことに気づいていないと言っても過言ではないんです。」と中西さんは言う。