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テクノロジーの経済学

限界費用ゼロ社会で起こる、「経済主体の分散」と「富の集中」とは?

テクノロジーの経済学:第1回

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 近年、テクノロジーの進化のスピードには目を見張るものがある。IoT、人工知能、ブロックチェーンと、新しい技術が次々と生まれてきた。一方で、最近のテクノロジーの進化は、社会的な変革や課題を伴うことにも特徴がある。クラウドソーシングやシェアリング・エコノミーの出現、仮想通貨の実現と普及、自律分散型組織、人工知能と雇用の問題など、社会的な制度、組織、概念などの組み替えが求められるようになっている。  このような現代のテクノロジーの進化を考える上では、テクノロジーと社会の相互作用という視点が不可欠である。テクノロジーは社会制度や人々の考え方に影響を与え、また社会からのニーズがあってはじめてイノベーションが実現する。本連載では、テクノロジーと社会・経済の相互作用という観点を土台としつつ、テクノロジーの進化が我々の社会にどのような変化をもたらしてきたのか、また社会はテクノロジーに影響を受けてどこへ向かっていくのか、考察していきたい。  第1回となる本稿では、イノベーションによって引き起こされる社会変革を考える上で、共通的に使える視点をいくつか提供することにする。

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Amazonなどにみる、「取引コスト」の絶え間ない削減

 ITがビジネスや経済にもたらしている最大の原動力の一つが、「取引コストの削減」と言われるものである。取引コストとは、企業や個人が経済的な取引を行う際に、対象となる製品やサービスの直接的な価格以外に必要なすべてのコストを指すが、ここでは二つのレベルの取引コストに分けて考察したい。

 「第一のレベルの取引コスト」は、取引において明示的に必要なコストである。例えば、取引相手を探し出し、相手が信用に足る主体かを判断するための情報を集めたりする。相手が売る商品の質や内容を吟味するためのコストもかかる。さらに、支払いを行うためのコストや、物流のためのコストなども必要である。

 こうした直接的な取引コストは、過去数十年の間に様々なITサービスのおかげで劇的に低下してきた。Amazonによって、欲しかった商品を簡単に発見し、見知らぬ売り手であっても安心して買うことができる。支払いはワンクリックで指示し、クレジットカードなどを介して決済が行われる。もはや小切手を書いたり送ったり、現金書留で送る必要もない。商品を注文すれば、地球の裏側からでもあっというまに自宅に届く。こうしたITによるマッチング、決済、物流などの高度化は、取引コストを劇的に削減してきた。これらの取引コストは、取引における「フリクション」、すなわち摩擦と見ることもできる。フリクションの低下によって、我々はいつどこにいても、世界中の最適な売り手から欲しいものを手に入れることができるようになった。

第一のレベルの取引コスト

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「組織内に抱えるか、市場から調達するか」という取引コストの問題

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この記事の著者

高木 聡一郎(タカギ ソウイチロウ)

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