“スーパースター現象”に代表される、「ネットワーク効果」と「富の集積」
ところが、さきほど述べた小規模化と矛盾するように見えるかもしれないが、ITによる取引コストの削減は、逆に世界規模での富の集積をももたらしてきた。世界中どこにいても簡単にマッチングし、取引が行えるということであれば、世界で最善のものに注文が集中することになる。これは「スーパースター現象」とも呼ばれるもので*2、Google、Amazon、 Facebook、 Appleなど、世界的な企業が巨額の利益を上げられることの要因でもある。
その背景には、ITサービスの特徴のひとつである「ネットワーク効果」がある。使う人が多ければ多いほど、そのサービスの価値が高まるというものだ。SNSで言えば、他のユーザーが多いほど、自分もそのSNSを使うメリットが増加する。また、もう少し詳しく見ていくと、これらのITサービスは「Two sided network」、すなわち2面のネットワークの接点に位置することがわかる*3。SNSであればユーザーと広告主、音楽配信であればリスナーとミュージシャン、ライドシェアであればドライバーと乗客、といった具合である。こうした二つのネットワークを拡大できた企業は、強力なネットワーク効果の恩恵を受け、急速に成長することができる。このネットワーク効果により、設立後わずか数年から十数年のうちに、世界を代表する大企業への成長したものは多数存在する。