Uberなどにみる、経済主体の「小規模化」と「脱組織化」
20世紀後半から、経済全体がモノを生産することよりも情報や知識を扱うものにシフトしてきたことによって、工場や機械設備などの大規模な資本がなくても、知識さえあれば個人や小規模事業者でも、大企業と渡り合って重要な仕事を担うことができるようになってきた。それに加えて、ITによって取引コストが削減されてくることで、以前よりもずっと簡単に起業し、世界中と取引を行うことが容易になっている。小規模であっても強みさえあれば新たな取引先を発見し、契約処理や支払い等も容易に行える。こうした経済主体の小規模化の行き着いたところが、個人が事業の担い手である「クラウドソーシング」と見ることもできる。
また、先にも見たように、従来であれば人を組織が雇用して、教育したり、指示・監督をしたりしなければ、組織が期待する行動が得られなかったものが、機会主義的コストの低下のおかげで個人に発注することも可能になってきた。例えばライドシェアのUberは、通るルートをGPS上に表示することで、不要な遠回りを未然に防止しているし、決済処理にドライバーを介在させないことで、不当な請求を防止することもできる。また、利用者による評価機能によって、乗客に不快な思いをさせるリスクも低減している。こうしたドライバーによる機会主義的行動の回避や質の確保・向上は、従来であれば上司や管理者がドライバーを教育したり、褒賞、懲罰を与えたりすることで実現してきたものだ。しかし、現代では階層的な権威に基づかなくとも、ITの力でドライバーが自発的に最善の行動を取るようにすることができる。シェアリング・エコノミーは、当初は資源の有効活用という思想があったものの、現実には、組織が担うプロフェッショナル・サービスを、個人が担うプロフェッショナル・サービスに転換したものになりつつある。