FAQ応答は、チャットボットがユーザーからの質問を認識し、あらかじめ用意されたQ&Aの中から適切な回答をユーザーへ返す仕組みだ。ここで問題になるのが、ユーザーからの質問は意味が同じであっても異なる語彙や表現で行われる点だ。適切な回答を返すためには、これらの違いを吸収し、人工知能が同一の意味であることを認識できる必要がある。この認識能力を強化するために、今回、ロジックの刷新を行ったという。
今回のFAQ応答ロジックの刷新は、機械学習の専門家である東京大学 佐藤一誠氏との協働により実現したもの。具体的には、2つの文から意味的な近さや、表層的な見た目の近さなどをさまざまな尺度で数値化し、それら数十種類の数値を元に最終的に2つの文がどのくらい似ているかを推測するモデルを構築している。これまでも2つの文の意味的な近さを数値化して用いていたが、今回の刷新では、それをさらに強化し、質問文の中で、より重要な語に注目することが可能になった。
これにより、クライアント企業のドメイン内において、人工知能が質問の意味を認識する上で「重要な語」と「重要でない語」を判別し、より重要と判別される語に注目した、回答ができるようになる。例として、金融商品を扱う企業において、ユーザーから「ウェブで過去の口座残高を見るにはどうしたらいいか」と質問された際、「口座残高」は金融商品を扱う企業において一般的な単語であり、人工知能は「ウェブ」や「過去」という語をより質問の意図を認識する上で重要と判断する。これらの語に注目することで、複数ある口座残高を確認する方法の中から、「ウェブ」で「過去」の口座残高を確認する方法を優先して回答することが可能となる。
このたびのFAQ応答ロジックの刷新後、試験導入では従来よりも約10%精度が向上するという結果が得られた。また、この手法は2017年5月に開催された人工知能学会全国大会でも発表している。