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「アート×サイエンス×クラフト」チームによる“美意識を活かした経営”が最強な理由

書評『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』

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論理的な判断が難しい経営課題を、「超論理的にかつ直観的」に意思決定するのがリーダーの仕事

 本書では、なぜ経営において「美意識」が必要なのか。その「背景」と「経営における美意識」の適用範囲を説明しています。美意識とは具体的に何なのか、も含めて本書の主張をピックアップしてみましょう。

 まずは「背景」から。主に3つの要素が時代背景として存在するようです。

 1つめは、旧来型のMBAに代表されるような、「論理的・理性的な情報処理スキル」の限界が大きく存在するということ。つまり、正しい解を求めようと論理的に考えると誰が解いても一緒のソリューションが量産され、ビジネスの課題解決がコモディティ化するということ。論理的に事象を構造化して、部分最適なソリューションを“マニュアルどおり”に積み上げるのではなく、全体を直観的に捉える資質、いわば“真・善・美”が感じられるソリューションを自身の脳内で創出する構想力や創造力が求められている時代であること。

 2つめは、新興国市場も含めて、世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつあるということ。つまり、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が、ビジネスにおいて重要な差別化要因である時代だということ。

 3つめは、システムの変化にルールが追いつかない状況が発生しているということ。リーマンショック、長時間労働問題、オウム真理教など、「ブラックに限りなく近いグレーゾーン」がブラックと認定される前段階で、内在的に「真・善・美」を判断する「美意識」が、個人にも組織にも求められている時代だということ。

 では、「経営における美意識」が実際に適用される「範囲」はどのようなものなのでしょうか。こちらは、大きく4つの適用範囲があるようです。

  1. 従業員や取引先の心を掴み、ワクワクさせるような「ビジョンの美意識」
  2. 道徳や倫理に基づき、自分たちの行動を律するような「行動規範の美意識」
  3. 自社の強みや弱みに整合する、合理的で効果的な「経営戦略の美意識」
  4. 顧客を魅了するコミュニケーションやプロダクト等の「表現の美意識」

 では、本書における「美意識」とは、そもそも何でしょうか。経営者や経営幹部だけではなく、現場を取り仕切るリーダーにとって現代で最も求められることとは何か。それはMBAエリートが金太郎飴的に量産するコモディティ化してしまったソリューションではなく、「サイエンス」で測定できない事象に遭遇した際に「測定できないもの」を判断するための「リーダーの美意識」だというのです。

 本書では、生産性というと日本人の多くが思い浮かべる人物、エドワーズ・デミング博士の言葉を引用して、その言葉が頻繁に誤用されていることを指摘します。

測定できないものは管理できない、と考えるのは誤りである。これは代償の大きい誤解だ。

 多くの誤用は、「測定できないものは管理できない」という部分のみを引用し、大事なその否定がすっかり抜け落ちていると。ずばり、経営において「美意識」が必要な理由は、VUCAと呼ばれる不確実な時代に、現場のリーダーも含めて行う重要な仕事は、測定できないことに対しての「直観的」で「超・論理的」な意思決定だとしています。この「非・論理的」ではなく、「超・論理的」でかつ「直観的」というのがポイントですね。

 さて、本書では「経営における美意識」を実行するためのモデルパターンを示しています。本書の主張はいたってシンプルです。ネタバレしすぎない程度に、詳細をみてきましょう。

次のページ
ミンツバーグと千利休から考える、「アート×サイエンス×クラフト」人材による“美意識を活かした経営”とは?

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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