「アート×サイエンス×クラフト」チームによる“美意識を活かした経営”が最強な理由

書評『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』

[公開日]

[著] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ロジカルシンキング 事業開発 企業戦略 論理思考 アート ミンツバーグ MBA批判 サイエンス クラフト 美意識

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ミンツバーグと千利休から考える、「アート×サイエンス×クラフト」人材による“美意識を活かした経営”とは?

 本書では、「経営における美意識」という抽象的な言葉を、幾つかの研究、人物などの活動から解説し、その経営スタイルを具体的にイメージしやすく提示しています。

 まずは、ヘンリー・ミンツバーグ*1のMBA教育批判を引用しています。ミンツバーグの主張は、経営というものは「アート」と「サイエンス」と「クラフト」が混ざりあったものだとしています。つまり、「アート」とは組織の創造性を後押しし、社会の変化の方向性を直感し、関係者がワクワクするビジョンを生み出すものであり、そのような活動を担う人材の資質だとしています。また、「サイエンス」とは、「アート」から生まれたビジョンに分析や評価で裏付けを与える活動と人材の資質、「クラフト」とは、「アート」が生みだしたビジョンと、サイエンスとは別のサイド、実行側面で支援する行為と人材の資質だとしています。

 本書では、この「アート人材」を経営の中核に据えて、「サイエンス人材」「クラフト人材」が脇を固める経営を推奨しています。言い換えれば、不確実な時代に組織が向かうべきPlanをアート型人材が描き、Doをクラフト型人材がリードし、Checkをサイエンス型人材が行う経営モデルとも言えます。

 この経営スタイルにも2つのパターンがあると、本書では事例をもとに解説します。それは、「美意識を軸とした経営」の2つのモデルです。

  • 実際にアートに精通し絵を描ける芸術的な趣味を実践している経営者。例としては、スティーブ・ジョブズのような経営者
  • 絶対的な権力を持つ創業社長、同族企業の経営トップが、直接に権限委譲する形でアートの担い手を指名するようなスタイル。例としては、ソフトバンク孫さんやユニクロ柳井さんなどの経営者

タイトル

 経営者自身が「アート」な側面も実践するような両利きの経営スタイルと、CEOが出島や直轄領で経営におけるアートの担い手を指名するような経営スタイルの2つのパターンがあるというのです。特に後者は、ラグジュアリーブランドなどではよく行われる経営ガバナンス体制であるとしています。

 また、アート部分を直接的に担うわけではなく、クリエイティブ・ディレクターとしてその能力を存分に発揮した最初の人物を、千利休であるともしています。なるほど、な感じですよね。

 本書では他にも、脳科学におけるソマティックマーカー仮説のお話、コンプライアンス問題に揺れる企業の例をリーダーの美意識の問題とするお話など、やはり「経営における美意識」の重要性を強調します。論理思考の限界に対してのソリューションをお求めの方はぜひ、読んでみてください。損のない内容です。


*1: カナダ・マギル大学教授。研究分野は、組織形態、経営のあり方、戦略策定プロセスを中心とする組織マネジメント論。マギル大学で機械工学を修めた後、MIT(マサチューセッツ工科大学)スローン経営大学院で博士号を取得。2000年に米国経営学会から優秀研究者に選ばれるなど最も影響力のある経営学者の一人。著書に『マネジャーの仕事』(白桃書房)、『MBAが会社を滅ぼす』『マネジャーの実像』(日経BP社)など。


世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」

目次
忙しい読者のために/本書における「経営の美意識」の適用範囲
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意響
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?


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