いい企業を見つけるために必要な「地域をうろつくこと」と縁の積み上げによる「口コミ」
森戸:まず山口さんは藤野さんの講演を聞いてどう思いましたか。
山口:地域を回るきっかけとして、まず仮説として地域ごとの良さがあるだろうと思ったんです。わかりやすく、地域ごとに強みがあってそれを活かして、世界や全国に進出する会社が増えればいいんじゃないかと。しかし、実際は地域ごとの良さを活かしていくというよりは、「ヤンキーの虎」のように、地方でミニコングロマリットをやって強くなっている会社か、地方だと希少性が高いビジネスを提供する会社が急成長していることに気がつきました。地方はいわゆる地域独自のビジネス、積み上げ型のビジネスをやるよりは、希少性の高いビジネスをしっかり成長させることが成功につながっていることがわかったんです。
藤野さんに伺いたいのは、ご紹介があったような地域のいい会社をどういう風に探されて、見出してきたのか。そして企業訪問をする前に持っていた仮説を検証する際に、どのようなチェックポイントを設けているのかを教えて下さい。
藤野:テレビや新聞に広告を出している会社かそうでないか。本当に儲かっている会社は広告を出さなくても困らない会社が多いので、なかなかテレビや新聞を見ていても情報は見つかりにくいんです。先ほどの、朝日印刷も同様でメディアで見つけられないんですよ。
でも、一つだけ隠しようがないことがあって、それが『会社四季報』です。四季報にはすべての上場企業がコンパクトにまとまっていて、業績の伸びも事業内容も株価の動向も書いてありますから、そこを詳細に見ていると伸びている会社も分かるんですよ。まずは「ファクト」が大事で、連続して伸びている会社の理由を分析します。たまたまなのか、意図しているものなのか。それほど難しい仕事をしているわけではありません。
ただとても面白いのは、“アタリ”をつけてAという会社の経営陣に会いにその地方に行く時、1社だけではもったいないのでたまたま近くにあるB社に行く。投資したいと思ったA社はあんまり良くなくて、近いからと寄った会社がいい会社であることが意外に多い。無駄撃ちでもいいから、とにかく“うろうろすること”がすごく大事だと思っています。ちゃんと調べることも大事だけれど、うろうろしながら、縁をたぐっていくことが大事かなと思います。
森戸:投資を決めたら、その企業に対してどのように説得して入り込んでいくのでしょうか。
藤野:私が凄い人だって自分で言わずに、誰かに言ってもらったほうがいい。誰か信頼してくれる人が紹介してくれたら、その人のことを信じる。信頼してくれる上司が推薦してくれたら、信頼して話を聞こうと思いますよね。ダイレクトに行くこともあるけど、その人が信頼している人を通じて、会いに行くことが多いですね。
類は友を呼ぶので、面白い会社の社長に会ったら、「お友達にいい人いませんか」と聞いて、紹介してくださいと言うんです。その社長が連絡してくれるので打率が上がりますよね。かつ、いい経営者はいい経営者を知っている。会いに行った時には、歓迎してくれて心を開いてくれる状態が多いですね。まずはなるべく知った人との縁を積み重ねていき、どんどん縁が増えます。それがすごく大事だと思います。