「Designing for Service」は、Service Design Research UKという、イギリスのサービスデザインに関する最先端の研究を行っているワーキンググループの論文を編纂したもの。
日本においては「サービスデザイン」という言葉自体、まだあまり馴染みがないが、グローバルには、特に欧州において、デザイン実践活動の中でもっとも注目されている領域の1つだという。
このクラウドファンディングプロジェクトの発起人である赤羽太郎氏は、「サービスデザインとは、端的に言えば『巻き込むデザイン』と言えるのではないかと考えています。デザイナーのクリエイティビティを、グラフィックやユーザーインターフェースを作るだけでなく、たとえばワークショップにおける新しいアイデアの創出や、組織や地域の複数の利害関係を持つステークホルダー間の合意形成に活用し、複雑なシステムの関係性を適切に機能させていくことを目指しています」としている。
英国では、行政や自治体などの公共領域での市民参加型の政策立案や、企業組織でのイノベーション文化の開発、オリンピックでのサービス運営設計など、多岐に渡る領域でサービスデザインが活用されているという。
「Designing for Service」で扱っているテーマは下記のようなもの。これらは、サービスデザインという領域自体の定義を問い直し、新たなフロンティアへの拡張を目指すものであり、単に最新事例の紹介という内容にとどまらないとしている。
- 「デザイン」と「サービス」の概念と理解の発展
- サービス開発と実施においてデザインが与える貢献とインパクトの測定計測
- デザインスキルの適用/ノンデザイナーによるデザインアプローチへの関心の増加について
- 境界領域の発展によるサービスのためのデザイン実践への影響
日本においてもサービスデザインの適用ポテンシャルは非常に高いが、言語の壁もあり、その最新事例研究に触れる機会は少ないのが現状だという。発起人の赤羽氏は、デザイン会社でサービスデザイナーとして活動しているが、常に新しい課題に直面し、ベストプラクティスを知りたいと常に考えているという。本書はそれに応えるものであるということが、翻訳出版プロジェクトを推進する大きな理由だという。
プロジェクト発起人の赤羽太郎氏は、株式会社コンセント サービスデザインチーム責任者で、シニアサービスデザイナー。コンセントにおいてサービスデザインチームの立ち上げを行い、顧客視点での新規サービス事業開発や体験デザイン、またそれを生み出す組織やプロセスを作るデザイン活動に従事し、プロジェクトリードを務める。また、サービスデザインの普及啓蒙を目指す国際組織Service Design Networkの日本事務局運営者でもある。