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Autodeskとカブクが語る、「モノづくりの民主化」を加速させる3つの技術と持続可能性

Autodesk University Japan 2017 セミナーレポート

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「ヒト×AI×IT」で障壁を壊し、“モノづくりの民主化”を目指すカブクの挑戦

 Autodesk University Japanでは、様々な講演・セッションが行われ、聴講者を喚起するようなインパクトある発表が次々と行われた。その中で、冒頭でウィリアムス氏が紹介したホンダのEVの設計に携わった株式会社カブクの横井康秀氏の講演について紹介しよう。

横井 康秀横井 康秀 氏(株式会社カブク インダストリアルデザイナー オープンイノベーション推進事業 事業責任者)

 株式会社カブクは、多くの顧客と世界中の産業用3Dプリンターを保有するデジタル工場をクラウド上でつなぎ、製造を行うモノづくりプラットフォームを運営している。本講演では、ホンダとカブクで取り組んだ共同プロジェクトを紹介しながら、そこで横井氏が実感した「デジタル製造がビジネスとデザインにもたらすインパクト」について紹介された。

 カブクは2013年に“モノづくりベンチャー”として設立し、横井氏はインダストリアルデザイナー、オープンイノベーション推進事業の事業責任者として、様々なプロジェクトに関わってきた。

これまでモノづくりは豊富な知識や経験が必要とされ、初期投資や在庫などのハードルも高かった。しかし、近年になって3Dプリンターなど最新デジタル製造技術が登場し、誰もがモノづくりの世界に飛び込める環境が整いつつある。カブクはそうした皆さんをお手伝いしたいと考えている。

 カブクの分散型プラットフォームでは、モノづくりのための情報をインプットすると最適な工場や装置が自動的に紹介される仕組みになっている。メーカー向けの「CONNECT(コネクト)」では、製造のためのデータを入力すると最適なマッチングと発注がなされ、基幹業務システムが受発注や製造管理まで行うというものだ。“入口から出口まで”をトータルにサポートし、製造業の収益の最大化・効率化を目標としている。自動化が難しい部分に関しては、デザイナーやエンジニアなどの人の手を介すこともあり、人とAIとITを掛け合わせたソリューションが特徴だ。この活用メリットとして、横井氏は「品質や日数、コストなどどんな要件でも1つの窓口でフレキシブルに対応し、300以上の工場に発注ができる」と解説。このサービスにより、ゲーム会社のような非製造業や教育分野などの活用も増えているという。

 こうした「モノづくりの民主化」を特に象徴するのが、クリエイターを対象とする「rinkak(リンカク)」だ。こちらも製造データを入力するだけで、製造見積が自動的に計算され、発注後は自動的にマーケットプレイスに登録され、世界に向けて製品を発信することができる。日本のみならずグローバルに発信されており、世界中にユーザーを増やしつつあるという。

 そして、企業との協業事例についてもいくつか紹介された。まずは国内のPCメーカーである「iiyama PC」にゲーミングPCのデザインを提供したのに加え、前面通気口の3Dデータを公開し、ユーザーが自由にカスタマイズできる仕様にした。横井氏は「これまでメーカーが製品の設計データを公開するのは稀なこと。しかし、これからはユーザーを取り込み、ファンを獲得していく手法として有効なのではないか」と分析。実際、「rinkak」を通じて行ったコンテストでは150を超える応募があり、プロモーション効果とファンコミュニティの盛り上げに大いに貢献したという。

 2つめのプロジェクトは、トヨタ自動車の3輪超小型電気自動車「TOYOTA i-ROAD」 向けカスタマイズパーツの提供について紹介された。サイト上にボンネットパーツとペットボトルホルダーについてデータを提供し、ユーザーは感覚的な操作で3Dデザインを行う。そのデータがカブクのプラットフォームに流れ、工場から約2週間で製品が直送されるという仕組みだ。

タイトル

 「マスカスタマイズのニーズを検証したくとも、サプライチェーンの構築や在庫を持つことのリスクなどから躊躇があったところに、カブクのサービスがぴったりと合った好例」と横井氏は語る。

 そして3つめは、ホンダとの協業で3Dプリントによる車両の製作プロジェクトが紹介された。旅行者や農業従事者などを対象に地方自治体で一人乗りの車両のニーズを検証する中で、鳩サブレで知られる鎌倉の菓子メーカーである豊島屋のオーダーに応じてカスタマイズカーを製造したという。

タイトル

 横井氏は「製造プロセスで『FUSION 360』などを活用し、デザイン作業のみならず、クラウドを介して多様な関係者とデザインイメージゴールを共有することが可能になり、迅速な作業が可能になった」と評価する。トータル2ヶ月で製造期間が1ヶ月半と大変スピーディなプロジェクトとして完遂し、2016年10月に出展した「CEATEC JAPAN 2016」では、すべてを3Dプリンターで製作するという先駆的な取り組みとして国内外から高く評価されている。

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