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クリステンセン「ジョブ理論」入門

顧客との対話ツールとしてジョブ理論を使う

第九回

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顧客の成し遂げたいことを探り当てるためのインタビューは、漫然と行なってもうまくいきません。今回は「問いかけ」にジョブの観点を取り入れる実践方法を紹介します。

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 クリステンセン氏はジョブ理論を実例から帰納的に導いて築いた理論だと言う。20年間にわたり消費のメカニズムを通して人が何を成し遂げようとするのかを注意深く観察してきた結果だ。ジョブ理論は公式で表されるようなものではなく、データに裏付けされた相関関係でもなく、ストーリーで語られる納得感のある人の行動を理解するツールだ。ジョブ理論を使って顧客と対話することで、顧客自身が気づいていない(自分では言葉として表現できない)ニーズを発見することができる。そして、なぜそのジョブを解決したいのか(解決するために製品・サービスを雇いたいのか)を誰もが理解できるようにストーリーとして語ることができる。ジョブ理論を対話ツールとして使い、顧客のジョブを理解するための活動を紹介しよう。

ヒアリングの何が問題か?

 A社は全国に支社を持ち、地域に密着したIT企業として安定した業績を上げていた。しかし、オンプレミスで顧客ごとに開発する従来型のシステムインテグレーター(SI)事業を中核とするA社は徐々にビジネスを侵食されつつあった。クラウドに代表される新たなサービスが少しずつ仕事を奪っていたのだ。多くのクラウドサービスはリアルな顧客接点を持たないことがスケールメリットを出す上での強みであり、弱点でもある。その点を利用し、地域密着の事業機会を探ることにした。全国に広がる支社というリソースを活用することで勝てるという目論見だ。A社は社会課題の解決というテーマを各支社から募集するという活動を始めた。この活動に伴って、支社はそれぞれ地域のヒアリングを行うことにした。

 ヒアリングは一定の成果があった。現地の生活者から生の声を聞き、問題意識は高まる。しかし、それだけだけでは事業機会を発見するような実績を挙げることができないでいた。支社のメンバーは社会課題を目の当たりにし意識は高まるものの、その声を聞き、理解することにとどまっている状態だったのだ。せっかく現地で見て聞いた生情報は、解決策の提案やビジネスアイデアの創出につながることはなく、レポートや報告書の束になってしまっていた。そのレポートを読むと、生活者たちの生の声は記載されているものの、周辺の状況やなぜそのような事態になったのかといった背景もなく、不満の本質まではたどり着いていない課題設定がされているものばかりだった。

 実はA社に限らず、顧客ヒアリングといえば一字一句、顧客の声を拾うことが目的化し、その数を競うような活動がなされていることがとても多い。あくまでも「解決するべき」課題を設定するために数多くの声を聞くという目的を忘れないでいたい。
 実際、A社の上級役員からも苦言を呈される場面があったという。「現地の課題の理解は素晴らしい。困っている様子が伝わってくるし、現地に行っていない私でも助けたいという共感が湧き上がってくる。ただし、その先、我々が何をするのかが見えない。顧客は具体的に何を解決すれば対価を喜んで払ってくれるのか?」

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 竜也(ヤマダ タツヤ)

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