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「イノベーションのジレンマ」の大誤解

成功する社内事業開発の「偶発的出現率」を高める8つの“道すじ” ──『幸田正司物語・最終章』

第10回:「イノベーションのジレンマ」の大誤解【番外編2】イントラプレナーアクセラレーターという選択肢Vol.4

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 この数か月の間、既存企業のイノベーション不全を憂うメディア等での論調が増えています。そんな中、多くの企業が“絡まった蜘蛛の巣”から抜け出そうと努力し、オープンイノベーションという心地よい言葉に誘引され、各社それぞれのイノベーション活動が起こり始めています。オープンイノベーションは魔法の杖ではなく、あくまで考え方を指し示すもの。おそらく、今の一過性のブームからは綺麗に事業は生まれてこないでしょう。とはいえ、このプロセスが無駄ではなく、この経験が次の糧になっていく重要なプロセスとなるでしょう。事業創造は多くの失敗の経験の中から学び、一部の成功を紡ぎ出すプロセスなのですから。  今回は、前々回から続く、『幸田正司物語』の最終章をお届けします。社内で新規事業を起こす場合、特にディスラプティブ(逸脱的)であればあるほど、成功可能性を論じる前に「実施さえ困難」になることがあります。「イントラプレナー幸田正司」は社内のしがらみの中でどのように乗り切るのでしょうか。

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『幸田正司物語』前回までのあらすじ


東証1部の某食品メーカーの国際事業部に所属する中堅社員である「幸田正司」。新規事業開発部門への異動の希望を持つも叶わず、社外での起業家コミュニティ活動などを積極的に行いながら、幸田正司は、本業に悶々とする気持ちを抱えて過ごしていた。
幸田の勤める企業の経営陣も、既存事業の停滞と新規事業が立ち上がらないことを憂い、会長により「社長の抜擢人事」が行われた。「抜擢社長」の松木がまず着手したのは、「新規事業部門の設置」と「社内新規事業の公募制度」だ。既存事業部門の反対を押し切って、会長と社長が強引に推し進めた社内で初めての「社内新規事業公募」は、早速実施された。
幸田正司はこれに喜び、公募にエントリー。第1回の公募では企画の詰めの甘さもあり採択されず、第2回の公募では自信を持っていた企画も結局採択されるに至らなかった。幸田正司にやりきった気持ちで退職を決意する。しかし、幸田正司に注目していいた抜擢社長の松木は「別会社の立ち上げ」というオファーを提示した。
そのオファーに驚きつつ期待に応えたいが、社内の抵抗は明らかだった。悩んだ幸田は起業家コミュニティのメンターに相談するとあっさり「誰のための事業をしたいのか、内なる声を聞けばいい」と。幸田はオファーを受けることを社長に告げようと社長室に向かう。待ち受けていたのは社長の松木以外に会長の常山も同席していた。常山は、既存事業を中心とした現在の会社の方向性に大きく舵を切った張本人でもあった。現状への懺悔と打開策を社長の松木を抜擢し準備していた。会長の庇護があるとは言え、社長の松木は役員会での基盤は脆弱であった。そんな経緯を知らず、幸田正司は「社会のために事業を」と、社長室に向かったのであっった。


『幸田正司物語』バックナンバー

■第1回:オープンイノベーション2.0時代の「社内起業、8つの成功の道すじ」~『幸田正司物語』
■第2回:“贅肉は落ちても筋肉質にならない”大企業のジレンマ──社内起業家とリーダーシップ


会長と社長の庇護下にあっても避けられない、既存部門からの抵抗と社内資源の活用というジレンマ~「幸田正司物語⑥」

結局、幸田は松木社長のオファーを受け入れ、退職願を取り下げることになる。ただし、幸田はこうも理解していた。松木社長の庇護があるとはいえ、実際はそんなに動きやすい活動にはならないし、関係部門からは相当の抵抗を受けるだろう。特に幸田のビジネスプランは短期的にはオペレーションの効率化がしにくい食品のパーソナライゼーションを標ぼうしており、マスプロダクト開発のリニアモデルに最適化された社内の各部門からは協力を得られず、特に製造部門からはまったく協力は得られず、むしろ抵抗さえ受けるだろうと思われた。事業開発は社内の従来の価値基準や意思決定プロセスに拘束されては推進しにくいことは十分分かっている。それゆえに、本業からできるだけ隔離された環境で事業開発を推進することが必要な反面、社内の資源を活用するのであれば適切に社内との接点を確保するということも必要であり、それがジレンマでもあった。

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最初のハードルは「社内指定の事業計画フォーム提出」という“社内お絵かき”~「幸田正司物語⑦」

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この記事の著者

鈴木 規文(スズキ ノリフミ)

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